2012年6月号記事
原発停止問題 - 景気回復のためにも一刻も早い再稼動を
5月5日に泊原子力発電所3号機が定期点検に入ることで、日本の原子力発電所54基がすべて停止することになった。
そこで政府は福井県の大飯原発3、4号機の再稼動に向けた取り組みを続けている。
枝野幸男経済産業相は4月14日、西川一誠・福井県知事や時岡忍・同県おおい町長らと会談し、大飯原発の再稼動の同意を要請した。
同県は、政府の安全基準の妥当性を検証する県原子力安全専門委員会の会合を16日に開き、その後、県議会で再稼動について議論する。おおい町は住民説明会を経て住民の意思を確認する。
この政府の動きに強い反発を示しているのが関西電力の筆頭株主である大阪市の橋下徹市長。大阪府・市が再稼動を認める前提として「原発から100キロ程度の府県との安全協定締結」などの8条件を政府や関西電力に突きつけている。これを認めれば、原発は一基も再稼動できなくなると政府は困惑している。
過剰とも言える反原発ムードに橋下氏が上手に乗っているようにも見えるが、そろそろ、冷静な議論が必要だろう。
経済ダメージが大きい原発停止
現在、電力の多くを火力発電に頼っているが、『「反原発」の不都合な真実』(藤沢数希著)によれば、火力発電による大気汚染での死者は世界で毎年30万人に上り、かたや原発での死者は、チェルノブイリの4000人(多めの推計)だけだという。
また、 停止すれば安全だというのも大きな誤解 だ。福島第一原発の場合、4号機は定期点検中で原子炉の中は空だったのに水素爆発を起こしている。
さらに、このままいけば夏場に向けて、電力供給の不安も高まっていく。
資源エネルギー庁は、大飯3、4号機が再稼動しても計236万キロワットを賄えるだけで、一昨年並みの猛暑を迎えた場合、全国で5・7%の電力不足があるとしている。
経済界では2年目の節電要請に悲鳴があがっている。
ダイキン工業の岡野幸義相談役は「日本だけが節電をしていてはグローバル競争で闘えるわけがない。火力発電に使う原油など燃料の値上げで国富が海外に流れている」と指摘する(4月14日毎日新聞)。
昨夏、業界で一斉に休日シフトを行い、ピーク需要の分散に努めた自動車業界も、「今年は期待しないでもらいたい」「(労働組合の)自動車総連からも言われ、今年は難しい」(日本自動車工業会の志賀俊之会長)と強調する(4月14日付サンケイビジネスアイ)。
一刻も早く原発を通常稼動に戻さなければならない。