アメリカ疾病対策センターが29日、自閉症の子供の割合が2002年以降の10年で78%増加したとの報告書を発表した。報告によると、自閉症(アスペルガー症候群も含む)は10年前は150人に1人だったが、今回の調査では88人に1人となった。

彼らは、特定のことに神経を集中させる傾向が強く、日常と違ったことに適応することが苦手なため、周囲との意思の疎通や人間関係の構築がうまくできないことから孤立し、大学などを中途退学する人も多いという。

こういった現状を踏まえ、ミシガン大やオークランド大、コネティカット大などの大学では、自閉症の学生に対する支援体制の確立に力を入れている。ミシガン大では、同級生、寮の管理人、警備員、教授たちを対象に、「(自閉症の学生の)突飛な行動や不作法な振る舞いは、自閉症によるものである」と理解するための指導プログラムを実践している。

こうした取り組みの成果もあり、この数年で急激に、世間の自閉症に対する認識が高くなったという。

アメリカでは大学だけでなく、職場でも自閉症の人を支援する例がある。一部のIT関連業社では、自閉症の人の多くが苦手とする、エアコンやコピー機の動作音、電話の呼び出し音などを消すため、防音設備を整えるなどの対策をとっているという。

また、マイクロソフト社では、アスビーズ(=ここでは自閉症の人を指す)と非自閉症者がペアを組み、会議などの場を使って社会的相互交渉の訓練を行う取り組みもなされている。

1966年、ノースカロライナ大学医学部精神科で発足した「TEACCH」も、自閉症児、自閉症者が家庭・学校・地域社会で円滑に生活や就労できるよう、活発に支援活動を行っている。イギリスでも、自閉症協会立学校のひとつであるラドレット・ロッジ校でTEACCHのプログラムをカリキュラムに採り入れている。TEACCHのスタッフを迎えて、セミナーやトレーニングを開催しているという。

アメリカやイギリスと比べて、自閉症をはじめとする発達障害への取り組みが遅れていると言われる日本だが、アスペルガー症候群と言われる有名人に、坂本龍馬、アインシュタイン、エジソン、ゴッホなど、歴史上輝かしい成果を挙げた人物がいる。

特定の分野で驚異的な能力や才能を開花させる可能性を信じつつ、さまざまな支援団体の努力を温かく見守りたい。(清)

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2008年2月号記事 「アスペルガー症候群」の正しい見方

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=499