自民党憲法改正推進本部は憲法改正の原案をまとめ、同役員会で2日に了承した。4月末には最終案をまとめ、国会提出を目指すとしている。

その原案は、天皇を元首と定めることが一つの目玉だ。第1条は、「天皇は、日本国の元首であり、日本国および日本国民の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」となっている。

国際的には、国家元首は外交や軍事において国家の最終責任を負う。アメリカの元首である大統領はそうした権限をすべて負っている。天皇を元首とするならば、外交・軍事、その他国際社会との交渉の結果責任を問われるのが天皇だということになる。

先の大戦でアメリカが占領したとき、天皇伝統が廃止されてしまってもおかしくなかった。

真偽は確定していないが、近隣の大国が日本を占領した場合、「天皇の処刑」を目指しているという秘密工作文書の存在も報じられている。

その中で、あえて天皇を元首と位置づけるのは、天皇の首を差し出すようなものと言える。

2000年以上にわたる皇室の歴史は、天皇が時の政治的権力と離れ、象徴であり続けたからこそ存続しえたと言っていい。やはり最終責任を負うのは、国民の直接の付託を受けた政治家であるべきだ。

リバティ誌では、議院内閣制から直接選挙による大統領制への移行を主張してきた。そこには、日本国民の精神的象徴である皇室の末長い存続を願う思いが込められている。

自民党の憲法改正原案は、天皇伝統を危機にさらすものであることを認識すべきだろう。(憲)

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2011年7月号記事  それでも改憲は必要だ <もし憲法9条で国を守れるとしたら>

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2041