ここ数日、新聞やテレビなどは、防衛省沖縄防衛局の真部朗局長が、普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市の市長選をめぐって、有権者リストを作成したり、投票を呼び掛けるなどしたことを大々的に報じている。

防衛省の調査結果によると、真部局長は1月4日、防衛局総務部に指示し、全職員にメールで宜野湾市に住む職員や親族などの有権者情報の提供を求め、その人々に局長講話への参加を呼びかけた。23、24日にはそれぞれ10分程度の講話を行い、出席者は68人だった。講話では、今回が重要な選挙であることを伝えたものの、特定の立候補予定者に投票するような呼び掛けはなかったという。

ひいき目に見ても、真部局長の一連の動きに、「普天間移設に強硬に反対する候補者を勝たせないでほしい」というメッセージが込められていたことは明らかだろう。今回のケースは公職選挙法などには引っかからないようだが、真部局長は今週中にも更迭される見通しとなっている。

マスコミは連日、鬼の首をとったようにこのニュースを伝えるが、一連の過熱ぶりを見ていて腑に落ちない点がある。それは、マスコミが2009年夏の衆院選で、政権交代を実現させるために、積極的に民主党を応援する偏った報道を続けた責任について、マスコミ自身はどう考えているのか、という点だ。

当時のマスコミは、「政権選択」と表現するならまだしも、「政権交代」という言葉を多用し、徹底した民主党寄りの報道を行った。朝日新聞などは、社説で「混沌の出口はただ一つ」「『09年体制』の幕開けを」などとして、民主党にビュンビュン風を吹かせた。その年の12月の流行語大賞で、「政権交代」が年間大賞に選ばれたことからも、その応援ぶりの激しさが分かる。

今回の真部局長の行為は肯定できるものではないが、市長選と国政選挙、積極性の度合い、影響力が及ぶ範囲などにおいて真部局長とマスコミが犯した罪の重さを比べれば、マスコミは真部局長が受けている何百倍、何千倍もの批判や処罰を受けなければフェアではない。(格)

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2012年1月29日付本欄 数千人規模のデモを無視するマスコミ この国は中国か、それとも北朝鮮か?

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