野田佳彦首相は25日、就任後初めて中国を訪問。北京で温家宝首相と会談した。

会談で、野田首相は「中国の役割は極めて重要。日中両国間で、緊密に情報を共有し、協力して冷静かつ適切に対応したい」と語り、温首相は北の核開発をめぐる六カ国協議について、「対話と協力を通じて諸問題の解決と非核化を実現すると共に、朝鮮半島の長期的な安定を図りたい」と述べた。「朝鮮半島の安定化」では一致したものの、中国の思惑を額面通り受け止めるわけにはいかない。

中国は2012年秋の党大会で、胡錦濤から習近平へと政権が移行するため、これを前に、朝鮮半島で大きな混乱が起こるのは避けたい。26日付朝日新聞は、中国外務省幹部の話として「(日中間の)問題がなるべく目立たない首脳会談にしたい」という言葉を紹介している。

だが、金総書記の死去後、中国が北朝鮮に大量の食糧支援を行う動きを見せていることからも分かるように、中国が言う「安定化」とは、中国の意向に従う金正恩体制の確立だろう。胡政権は「米国などがこの時機を利用して北朝鮮の体制崩壊を画策すれば、北朝鮮も対抗措置に出て、不測の事態が起こりかねない」と警告し、けん制している(参考:26日付読売新聞)。

今回の会談は当初、今月12、13日に予定されていたが、中国側の一方的な要請で延期。ところが、金総書記の死去後、一転して開催へと向かった。しかし、一部報道によると、会談では、「金正恩氏の名前は出なかった」(外務省筋)といい、東シナ海ガス田開発問題や中国の日本産食品の輸入規制の緩和などに進展は見られなかった。進んだと言えば、日本が中国国債を購入することやパンダの貸与など、中国にプラスの多いものばかりだ。

結局、今回の会談は、中国が北朝鮮問題の安定化に汗をかいている姿を、世界にアピールするための演出だったと言える。日本は、そのダシに使われたと見ていいだろう。会談が行われることは望ましいが、外交の場で利用されるだけでは意味がない。(格)

【公開霊言動画】

2011年12月24日付本欄 「北朝鮮は3代目で終わらせなければいけない」 大川隆法総裁

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