この1、2週間で首都圏の放射線量を民間で調査し、線量が局所的に高い「ホットスポット」を発見する動きが目立っている。

世田谷区の民家での放射線騒動は別にしても、千葉県船橋市の公園で毎時5.82マイクロシーベルトの放射線量を市民グループが計測し、市当局に“告発”するなど、この種の活動が活発化している。

この公園の放射線量を年間に換算すると約30ミリシーベルトになるが、これが周辺住民の健康に害を与えるものなのかということが焦点になる。

一つのモノサシとして、最近発刊された英オックスフォード大のウェード・アリソン名誉教授(物理学)の著書『放射能と理性』をもとに考えてみたい。以下は著書のポイント。

  • (放射線量が多いほど人体に害があるという)「しきい値なし直線」(LNT)モデルはあまりに警戒過剰であり、危険性の示唆の多くは無視しうる。
  • 実験用ラットは7000ミリシーベルトの線量で50%が死亡したが、半分の3500ミリシーベルトだと死亡率は1%にも満たなかった。LNTモデルが成り立つなら25%になるはずだ。
  • チェルノブイリ原発事故でもLNTモデルは成り立たなかった。
  • 統計から見る限り、健康に影響を与えるのは100ミリシーベルト超に限定される。100ミリシーベルト未満では、放射線の影響はゼロである(短時間の急性被曝の場合)。
  • 長時間の慢性被曝の場合、月間100ミリシーベルトでも安全。

つまり、アリソン氏は月に100ミリシーベルトの放射線を浴びても安全だと言っている。これは同氏のオリジナルの主張というわけではなく、フランス科学アカデミーとフランス国立医科大学の研究や、放射線生物学者のポリコーヴ氏とファイネンデーゲン氏らなど多数の論文がある。

結局、放射線についての国際基準が新しい研究に基づいておらず、厳しすぎるのだ。その結果、福島や首都圏の生活に無用な混乱や不安を招いている。

年間数十ミリシーベルトのレベルで大騒ぎするのは、そろそろ終わりにしたいものだ。(織)