野田佳彦首相は16日、茨城県で行われた航空自衛隊百里基地での航空観閲式で、中国の軍事力の拡大について名指しで指摘し、自衛隊の役割の重要性に言及した。こうした直接的な発言は異例。

野田首相は式典で、「北朝鮮の軍事主義的な挑発行為とともに、中国が近海水域で活動を活発化させ、軍事力を強化していることから、わが国を取り巻く安全保障環境は不透明さを増している」と訓示。

また、自衛隊について「迅速かつ機動力を重視した動的防衛力の整備が喫緊の課題だ」と述べ、緊急事態への備えが必要であることを示すとともに、「日米同盟は外交安全保障の基軸だ」と強調した。

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(ネット)は、「同首相はこれまでも中国の軍事予算拡大の不透明性を強調していたが、自衛隊に直接影響を及ぼすこうした発言は初めてで、首相在任中に期待する自衛隊の役割に言及した」と伝えている。

鳩山氏、菅氏という歴代の民主党の首相とは一線を画し、中国の軍拡を警戒し、自衛隊を激励する野田首相の姿勢は評価できる。だが不思議なのは、この発言を国内の朝日新聞、毎日新聞、東京新聞などの左翼的な大手紙が一切報じていない点だ。いずれも、観閲式での野田首相の南スーダンへのPKOに関する発言は伝えているが、中国や自衛隊に関する部分は一切ない。

一昔前は、首相がこうした趣旨の発言をすれば、左翼マスコミは「首相、中国を批判」などと見出しを立てて、いちいち中国の要人などの批判的なコメントを集め、「こうした発言は、日中両国の関係を悪化させる」「むしろ、第二次大戦で被害を受けた中国に謝るべき」などと、首相に罵詈雑言を浴びせたものだ。

左翼マスコミの沈黙は、中国の軍拡は現実的な脅威だという認識の裏返しかもしれない。(格)