オバマ米政権が、台湾への新型戦闘機の売却を見送り、すでに保有している初期型戦闘機の更新にとどめる方針を固めた。自国経済の立て直しのために、アジアの民主国よりも中国に配慮した形だ。

20日付のウォール・ストリート・ジャーナル(web版)などによると、オバマ政権は、台湾が2006年から要求していた新型の戦闘機「F16C/D」66機の売却には応じず、台湾が現在保有し、老朽化が進んでいる146機の初期型「F16A/B」を改良するための兵器パッケージを提供する方針。

米国務省高官は「初期型を更新することは事実上、新型の戦闘機をより安価な価格で提供することと同じことだ」と説明するが、この説明は苦しい。明らかに中国に配慮した方針である。

オバマ政権は昨年1月、約64億ドル(約4900億円)に上る台湾向けの武器売却を発表したが、そのとき中国政府は激しく反発して、米国との軍事交流を1年にわたって停止。今年1月の、ゲーツ米国防長官(当時)の訪中を受けて、交流が再開した経緯がある。今回の方針も、中国に配慮せざるをえないオバマ政権の苦しい台所事情が見え隠れする。

今回の動きに対し、中国外務省の洪副報道局長は、「中国は米国の台湾への武器販売に断固反対する」と反発したが、軍事交流の停止までには踏み込まない見通し。8月にバイデン副大統領が訪中し、習近平・国家副主席と会談した経緯などを考えると、米国の方針も中国の反発も織り込み済みのものという見方もできる。

だが、今後も米国経済の中国依存が続くことを考えれば、東シナ海や南シナ海などアジアの安全保障に関する問題で、米国の関与が弱まることは避けられない。こうした情勢を見ても、日本は日米同盟を基軸にしつつ、早急に独自の防衛力強化を図らなければいけない。(格)