アメリカ政府が台湾への新型F16戦闘機の売却を断念することを決めたと、産経新聞が7日付で報じている。台湾は防衛力強化のため、66機の新型F16を売却するよう求めてきたが、中国が強硬に反対してきた。

結局は中国の主張にオバマ政権が屈した格好となったわけだが、背景には、アメリカの財政赤字問題がある。米格付け会社が米国債を格下げし、投資家が米国債の処分に動く危険性が高まっているが、中国は1.1兆ドル(約86兆円)を保有。中国人民銀行の周小川総裁は米国債中心の運用を見直す考えを示しており、「米国売り」の引き金を引く可能性がある。

中国は同じく財政危機に揺れるEUへの支援を強めており、沈む米欧に対して中国の存在感が高まっている。

オランダのシンクタンクECRリサーチの国際政治アナリスト、アンディ・ランゲンカンプ氏が「米欧が崩壊し、中国が勝利する」という記事を米政治サイトに寄せている。

「中国は米国債を多く持っているために、それを売り浴びせることによってアメリカの信用危機を起こすことができる。アメリカは中国に財政的に依存しており、中国は自分が望むように外交や経済、軍事面でアメリカを動かすことができる」

「アメリカの同盟国は他の馬(中国)に乗り換えることもできる。中国のバブル経済が軟着陸し、ヨーロッパとアメリカの経済がさらに弱くなるならば、中国は米欧の財政危機に対する勝利者になるだろう」

米欧の弱体化は避けられなくなっている。問題は中国のバブル経済が弾けるのかどうか。これで世界の行方が決まってくる。(織)