国際政治学者

佐久間 拓真

(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。

中東の「隠れた要衝」として知られるオマーンが今、静かな、しかし確実な「経済的侵略」の波にさらされている。長年、中立外交を旨とし「中東の平和の守り手」を自認してきたこの国で、中国による巨額投資がもたらすチャイナリスクが、国家の根幹を揺るがす死角として浮上している。

「中国・オマーン産業パーク」──経済特区への巨大投資で忍び寄る中国

その象徴的な舞台が、アラビア海を臨むドゥクム経済特区である。オマーン政府は石油依存からの脱却を目指す国家戦略「ビジョン2040」を掲げ、この地を国際的な物流・産業ハブへと変貌させようとしている。そこに救世主の如く現れたのが、中国の一帯一路構想であった。中国は「中国・オマーン産業パーク」と称し、100億ドルを超える巨額の投資を約束し、港湾、製油所、インフラ設備を次々と手中に収めていった。

しかし、この蜜月関係の裏側には、深刻な「債務の罠」が潜んでいる。オマーンは近年、原油価格の変動と財政赤字の拡大に苦しんでおり、中国からの融資は喉から手が出るほど必要な資金であった。だが、中国の投資手法は極めて狡猾である。建設プロジェクトを自国の企業に請け負わせ、労働者まで本国から送り込むことで、投資した資金を自国経済へと還流させる。その一方で、オマーン側には膨大な債務と、維持管理のコストだけが積み上がる構図が出来上がっている。

ホルムズ海峡外側の港湾が狙われる!?