《ニュース》

イギリスで提供されている原則無料の公的医療制度をめぐり、サービスの質が低下しているなどとして、国民の不満が高まっています。

《詳細》

イギリスでは1948年に、当時の労働党政権が「医療への公平なアクセスの実現」を理念として、「国民保健サービス(NHS)」を成立させました。税金を財源に、居住するすべての人を対象に医療サービスを原則無料で提供しています。

しかし、高齢化等によって医療ニーズが膨れ上がったことで、近年、慢性的な財政難や人手不足により、サービスの質が低下しています。

特に深刻なのが、「待ち時間の長さ」です。英国医師会によると、昨年10月時点で、治療を待つ患者は約624万人(英国民の約10人に1人)に上り、うち280万人が18週間以上、17万人が1年以上治療を待っている状態だといいます。その結果、「深刻な健康問題を抱える患者が、医師の診察を受ける前に亡くならないことを祈りながら、治療を受けるまで何カ月も何年も待たされる」という実態があると指摘されています。

他にも、例えば、NHSで産科医療を受けた女性たちの多くが、「十分な説明がない中での緊急帝王切開」や「出産における痛みの緩和の失敗」などにより、毎年3万人の女性が出産後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しているといいます(1月14日付日本経済新聞)。

こうした中、国民の不満が高まっています。英シンクタンクのナフィールド・トラストなどの調査によれば、2007年時点でNHSに「満足している」と回答した人の割合は51%でしたが、21年には満足と不満の割合が逆転し、24年には59%が「不満」と回答しているとのことです。

現在、労働党政権はNHSの"改革"に動き出していますが、政府支出を増やすというもので、デジタル利用などを進めることで、10年間かけて医療の質を向上させることを目指すとしています。同政権は24年にも、400億ポンド(8兆円)の増税を発表しましたが、富裕層課税強化に伴う税収を、NHSなどの支出に充てる方針を打ち出しています。

《どう見るか》