国際政治学者
佐久間 拓真
(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。
ニュージーランドは6月、クック諸島への援助を打ち切るという決定を下した。これは単なる外交上の不和ではなく、太平洋地域における中国の急速な影響力拡大に対する、西側諸国の危機感の表れである。
ニュージーランドのラクソン首相やピーターズ外相らは、クック諸島側の中国接近に不快感を露わにした。両国の長年にわたる特別な関係、すなわち「クック諸島がニュージーランドと自由連合の関係にあり、長らく主要な援助国であった」という歴史的経緯を踏まえると、その断固たる姿勢は異例と言える。
太平洋における中国の「債務の罠」外交
ニュージーランドの援助停止の背景には、中国がクック諸島を含む太平洋島嶼国に対して展開している、経済的侵略とも称される外交戦略がある。巨額の融資やインフラ投資を通じて経済的な依存関係を作り出し、最終的にこれらの小国を地政学的な影響下に置こうとする試みである。
中国が太平洋島嶼国に提供する援助は、多くの場合、港湾、道路、政府庁舎といった大型インフラ建設に向けた借款(ローン)の形式を取る。これらのプロジェクトは、経済規模の小さい島嶼国にとっては魅力的に映る。だがその実態は、不透明な契約条件と、返済能力を超えた過大な債務を生み出す要因となることが多い。























