《ニュース》
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5日、イーロン・マスク氏のソーシャル・ネットワーク「X」に対し、デジタルサービス法(DSA)の重大な違反を理由に、1億2000万ユーロ(約216億円)の罰金を科しました。2023年に施行されたDSAによる罰金が科されるのは初めてです。
《詳細》
DSAは、偽情報対策やアルゴリズムの透明化などを求める、プラットフォーム規制を強化するEUの中核的な法律です。DSAには、違法コンテンツや詐欺、誤情報から利用者を保護しなかった「大規模オンラインプラットフォーム」に対し、世界全体の年間売上高の最大6%を罰金として科せると定められています。
欧州委は、XがDSAに違反したと見なした理由として、以下の3つを挙げています。
(1) Xは、以前は著名人のアカウントが本人だと証明する青色の認証マークを提供していたが、現在は有料会員なら誰でも青色の認証マークを得られるようにした。認証マークを利用した詐欺が行われる恐れがある。
(2) Xは、表示される広告に関する透明性義務を遵守していない。
(3) Xは、保有する公開データを研究者が入手しづらくなるよう、障壁を設けている。
欧州委でデジタル規制を担当するビルクネン副委員長は、「青い認証マークでユーザーを欺いたり、広告の情報を隠したり、研究者を締め出したりといった行為は、EUのオンライン環境では許されない。DSAはユーザーを守るものだ」と述べています。
Xには、問題の解決策を提示するまでに60日、是正措置を取るまでに90日の猶予期間が与えられていますが、対応を怠れば追加の制裁が科される可能性があります。また、DSA違反とされる他の項目については、まだ判断が下されていないため、さらなる罰金が科される可能性もあります。
マスク氏は、欧州委の決定に「検閲だ」などと強く反発し、XでEU猛批判を続けています。7日にはXに「EUは解体されるべきであり、主権は個々の国々に返されるべきだ。そうしてこそ政府が国民をよりよく代表することができる」とまで投稿しました。
トランプ米大統領も、ホワイトハウスで開かれたイベントで記者団に、「イーロンはその件で私に助けを求めてきてはいないが、それは大変なことだ。それが正しいとは思わない。完全な報告書を受け取るつもりだ。欧州は非常に慎重でなければならない」と語りました。
またヴァンス副大統領は4日、Xで「ごみのような理由で米企業を攻撃するのではなく、言論の自由を支持すべきだ」と欧州委を非難。ラトニック商務長官が5日、「DSAは言論の自由と米テック企業を抑圧するために設計されている」と述べるなど、トランプ政権の閣僚は次々と、EUの官僚主義的な規制が米IT企業や言論の自由を抑圧しているという考えを示しました。
EUは、アップルやグーグル、メタなどの他の米IT企業に対しても、DSAやデジタル市場法に基づく調査を進めています。
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