澁谷 司

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

11月1日に行われたアジア太平洋経済協力(APEC)会議での30分にも満たない日中首脳会談が、国際世論の耳目を集めた。

会談開始からわずか2分後、首脳同士が挨拶を交わした直後、高市早苗首相が習近平主席に対し、核心を突く鋭い質問を次々と投げかけた。

その質問とは、(1)尖閣諸島と東シナ海の情勢、(2)中国によるレアアース輸出規制、(3)中国当局による日本国民の拘束問題(象徴的なのは、アステラス製薬社員が中国に足止めされた問題)、(4)在留日本人の安全保障(蘇州で複数回、日本人親子が襲撃される)、(5)中国の南シナ海での国際法違反問題、(6)香港の自由と法治の破壊、(7)新疆・ウイグルの人権状況、(8)北朝鮮による日本人拉致未解決事件等だった。

中国国内では、「これは今までの日本の対中外交姿勢の転換であり、従来の『礼儀正しく抑制的』な態度から、『冷静かつ断固たる』姿勢に変化しつつある」という指摘もある(*1)。

会談後、高市首相は記者団に対し「台湾海峡の平和と安定を維持することが地域の安全にとって重要だと明確に伝えた」と述べた。口調は平静ながらも重みがあった。

短い日中会談の中で、高市首相は行動をもって自らの外交哲学──媚びるような笑顔も見せず、譲歩せず、衝突を避けず、曖昧にもしない──を披露した。

これは、日本は「中国経済に縛られながら人権問題に沈黙するという曖昧な姿勢を取らない」という意思表示と指摘されている(中国には未だ約3万2000社の日系企業が存在し、ある種の"人質状態"が続いている)。

高市首相の「本題から入る」外交スタイルに、日本のネットユーザーも、「真のサムライスピリット」「これこそ日本の外交が取るべき姿勢だ」などとコメントしている。

(*1)11月1日付地球大観