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このほど北欧で運行中の中国製電気(EV)バスに、「中国からの遠隔操作で突然停止させられる可能性がある」ことが発覚し、ヨーロッパ全土で中国製品に対する深刻な懸念が巻き起こっています。

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ノルウェー最大の公共交通事業者ルーターは10月28日、セキュリティ調査の結果、同社が運行している中国製のEVバスに、中国メーカー側が遠隔でアクセスできるSIMカードが搭載されていたことが発覚したと発表しました。

EVバスは中国のバスメーカー・宇通(ユートン)が製造したものです。ルーターによると、宇通は、SIMカードを介して遠隔でソフトウェアのアップデートができる権限を有しており、さらにその過程で、バッテリーや電源供給制御システムにアクセスできることが判明したといいます。ルーターは、「理論上、メーカー側がこのバスを運行停止や機能不能の状態にすることができる」と指摘しています。最悪の場合、外部からの遠隔制御により、情報窃取や走行中の突発的な運行停止など、公衆の安全を脅かす事態が発生しうるといいます。

ルーターのベルント・レイタンイェンセン取締役は、「インターネットに接続されたあらゆるものがリスクをもたらすことが判明しており、バスも例外ではない」と述べ、ハッキングから保護するファイアウォールの開発に取り組むとしています。また、しばらくはSIMカードを抜いて、運行をオフラインのままで行う方針といいますが、オフラインで運行すれば、必要な他の通信機能(診断や管理機能)も失うという問題点もあります。

ノルウェーでは全国でEVバス約1300台が運行しており、そのうち約850台が宇通製です。ノルウェーの運輸相ヨンイーバル・ニーゴール氏は、「安全保障の協力関係にない国が製造したバスを運行することに伴うリスクを徹底的に評価したい」と述べ、安全保障上の危機感を表しています。

ノルウェーの発表を受け、宇通製の同タイプのバスを保有するデンマークも調査に乗り出しました。その結果、「宇通のEVバスにはインターネット接続システムやカメラ、マイク、GPSなどのセンサーが搭載されており、これらがバス運行に障害を引き起こしうる脆弱性として悪用されるリスクがある」と、中国メーカーによる遠隔制御の可能性が発覚。中国製EVバスを計469台運行しており、そのうちの半数以上が宇通製であるというデンマーク最大の公共交通事業者モビアは、「これは中国バスだけの問題ではなく、中国製電子装置を内蔵したあらゆる種類の車両や機器に共通する問題」との見解を示しています。

国内に約700台の宇通製EVバスが走るイギリスでも、政府が調査に乗り出しました。宇通はヨーロッパのEVバス市場でシェアトップを占める最大手であり、ヨーロッパ全土に騒動が広がっています。

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