国際政治学者
佐久間 拓真
(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。
近年、中国は南太平洋の島嶼国であるソロモン諸島と急速に関係を強化している。2019年の外交関係樹立、そして2022年の安全保障協力協定の締結など、その動きは国際社会、特に米国やオーストラリアといった伝統的な地域大国に強い警戒感をもって受け止められている。なぜ中国はソロモン諸島との関係強化を急ぐのか。
「第一列島線」を越えるための地政学的・軍事的意義
中国の最大の狙いは、太平洋地域における影響力の拡大、特に地政学的な要衝としての価値にある。ソロモン諸島は、中国が軍事的な影響力拡大の目標とする「第二列島線」にも近く、オーストラリアや米国の重要な戦略拠点であるグアムやハワイにも迫る場所にある。
2022年に締結された「安全保障協力協定」は、具体的な内容が非公開とされているものの、中国がソロモン諸島の治安維持支援や人道支援のために艦船を派遣し、同国内に「立ち寄り(寄港)」を行う可能性を含んでいる。将来的に中国軍の駐留や事実上の軍事拠点の形成につながるのではないかという懸念を生んでいる。
中国がこの地域に軍事的な足場を築くことができれば、オーストラリアやニュージーランドへの抑止力を高めるとともに、西太平洋から南太平洋に至る広大な海域での作戦遂行能力を向上させる戦略的布石となり得る。
経済的利益と資源の確保
さらにソロモン諸島は、豊富な森林資源や鉱物資源(ニッケルなど)を有しており、これらの資源獲得も中国の経済的狙いとして無視できない。中国企業はソロモン諸島の木材貿易や鉱業部門に深く関わっており、特に資源開発やインフラ建設における中国企業の存在感は増している。






















