最低賃金が過去最大の6%引き上げとなり、「1118円」と初めて1100円の大台に乗ります。石破茂首相は「賃上げこそが成長戦略の要という基本的な理念が浸透し成果を上げている」と、その「成果」を強調しています。

参院選大敗による退陣圧力が強まるなか、看板政策である「賃上げ」に進展があったことを、アピールしたい狙いとも見られます。

しかし、「企業経営の自主権」に手を突っ込む手法は、「雇用減」や「物価高」といった、深刻な副作用が懸念されます。

「賃上げ」は「賃金上げない企業が、成長のボトルネック」と見る施策

最低賃金は、厚生労働省の審議会が引き上げ目安を答申する形となっています。事実上、政権側の意向が強く反映されていると見られています。

石破政権は「最低賃金を2020年代に全国平均で1500円とする」という目標を掲げています。そのためには、年平均7.3%の引き上げが必要です。審議会は、目下の物価上昇などを織り込んだとしていますが、政権の"要求"に近づける数値を出したと言えます。

「賃上げ政策」は、安倍政権以来、自民党の中心的経済政策となってきました。発想としては「企業が利益を内部留保として貯めさせず、賃金に回すことで、人々の消費も増えて、企業も潤い、また賃金を増やせ、好循環が始まる」というもの。

"血流の滞ったところに指圧をかけて代謝を上げる"手法にも見えますが、「利益をため込んで、労働者に分配しない企業は悪」という左翼的心情にも通じやすく、岸田首相、石破首相と、政権の左傾化が進むにつれ、経済政策としての比重が増してきました。

しかし、企業を「血の滞り」や「経済成長のボトルネック」のように見て、賃金を上げさせたところで、期待されるような好循環は起きないどころか、大きな副作用が懸念されます。

企業にとっては事実上の"雇用税"として働く!