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尖閣諸島をめぐり、米専門家が「中国が尖閣の『共同管理宣言』を準備している」と警告しています(4月9日付産経新聞一面)。

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産経の取材に応じたのは、米戦略予算評価センター(CSBA)の上級研究員、トシ・ヨシハラ氏です。日系アメリカ人学者である同氏は、米海軍大学校付属の中国海洋研究所に主任研究員として10年以上在籍していました。

ヨシハラ氏によると、中国の習近平国家主席が2023年末に中国海警局本部を訪れ、「魚釣島(尖閣の中国側名称)の主権を強化せよ」と命じて以降、尖閣水域への艦艇の侵入が激増しているといいます。24年の接続水域への侵入は年間355日と過去最多を記録し、今年3月には日本の領海に過去最長の92時間以上も滞在しました。

中国はそうした侵入を海警局の公式サイトに詳細に記載し、尖閣への恒常的な「駐留や巡回」の国際的認知を図っているといいます。当局はその先の目標として、尖閣の中国の主権や施政権を公式に宣言し、日本に対して「当面の尖閣の共同管理」を通告する戦略を進めているとのことです。

ヨシハラ氏はまた、「人民解放軍海軍の末端の民兵を漁民と称して尖閣に上陸させ、占拠や実効支配を目指す作戦も計画している」と言及。日米安全保障条約では「日本の施政権下の領土への武力攻撃にアメリカが共同防衛にあたる」ことを義務付けていますが、漁民を装う上陸作戦は「武力攻撃」に当たるかどうかの判定が難しく、共同防衛の障害になる可能性があると指摘しています。

こうした危機を脱するには、日本は「尖閣への公務員常駐」などの措置も考えられますが、ヨシハラ氏は「その種の現状変更には中国側の強い反発が予想される。日本側に断固として対処する覚悟がない限り、解決策とはならない」と述べています。

なお同氏は、台湾有事についても触れ、「中国は台湾に対しては正面からの大規模上陸作戦ではなく、海上封鎖や台湾内部の攪乱など、純粋な軍事攻撃と判定できない手段」を講じるつもりだと推測しています。

ただ、対中強硬派であるトランプ米政権の登場で、アジアを取り巻く情勢が変わりつつあることを考えると、別のシナリオも考えられます。例えば、中国は「武力攻撃」だと判定されない手段で尖閣を占領するとみられていますが、トランプ氏が中国を「敵」と果断に認定すれば、たとえ武力攻撃を伴わなくとも報復に動くことは十分あり得るでしょう。

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