全国公開中
《本記事のポイント》
- 指輪物語の中つ国のモデル 北欧アズガルト文明
- 政治指導者に求められる資質 勇敢さと慎重さ
- 最後の希望が失われた時が、本当の始まり
J・R・R・トールキンのファンタジー小説をピーター・ジャクソン監督が実写映画化した大作『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の前日譚を描く長編アニメーション。小説『指輪物語 追補編』に書かれた騎士の国ローハン最強のヘルム王についての記述をふくらませたオリジナルストーリーで、実写版三部作の183年前に起こった伝説の戦いを描く。
誇り高き騎士の国ローハンは偉大なるヘルム王に護られてきたが、突然の攻撃を受け平和は崩れ去ってしまう。王国の運命を託された若き王女ヘラは国民の未来を守るべく、かつてともに育った幼なじみでもある最大の敵・ウルフとの戦いに身を投じていく。
監督には日本から神山健治が抜擢。実写三部作を手がけたピーター・ジャクソンやフラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエンがプロデューサーとして参加。日本語版では市村正親がヘルム王、小芝風花が王女ヘラ、津田健次郎が最大の敵ウルフの声を担当した。
指輪物語の中つ国のモデル 北欧アズガルト
本作の特徴は、厳しい北欧の自然を舞台に繰り広げられる、激しくも神話的な戦いそのものだ。
トールキンの作品は、北欧やアイルランド、ケルトの神話から多くの影響を受けているとされ、『指輪物語』の舞台となる時代は、アトランティス崩壊後の世界であるという。
この時代を、トールキンは古英語を用いてmiddanġeard(ミドガルド 中つ国)と呼んだが、幸福の科学大川隆法総裁によると、実際にアトランティス文明崩壊後、北欧にアスガルド文明が存在したのだという。
「アトランティス文明と現文明の間に、『アズガルド文明』とでも呼ぶべき北欧中心の文明がある。宇宙とも交流があり、キリスト教以前のヨーロッパの宗教のもとになっている。オーディン、マイティ・ソー(トール)、ロキなどの興した文明で、エジプト文明・ギリシャ文明等の現文明への影響が大きい。寒冷化で農業生産が落ちて、文明として衰退した」(『信仰の法』より)
映画で描かれている激しい戦いは、実際にアズガルト文明時代に繰り広げられた勢力争いであったと言ってもよく、最高神であるオーディン神への信仰を守る戦いでもあったのだ。
ちなみに、オーディン神は「戦争と死」「知識と詩芸」「呪術」など、様々な神性を持つとされ、現在は、ロシアのプーチン大統領を指導し、ロシアを無神論・唯物論から救い、新しい繁栄に向かわせようとしているのだという(*)。
(*)『小説 十字架の女2〈復活編〉』より
政治指導者に求められる資質 勇敢さと慎重さ
この映画の魅力は、主人公の若き女王ヘラが、父親であるヘルム王との葛藤や敵との壮絶な戦いを経て、国民を守る勇敢なリーダーへと成長していく姿が生き生きと描かれている点である。
2人の兄を持ち、末娘として育ったヘラは、自由奔放で、周りの世界への好奇心と愛情に溢れた行動力のある女性として登場する。
しかし、兄たちが相次いで戦死し、失意に沈む父親が病床に伏すに至り、国民を守る重責が彼女の双肩にずっしりと重くのしかかってくる。そして、父ヘルム王から国民を救う使命を託され、父が自らの命と引き換えに数多くの敵を倒す姿を目の当たりにして、真のリーダーとして立ち上がることを決意する。
父から王権を託された後、敵に立ち向かっていく勇敢さを持ちつつ、恐れから逃げず、冷静沈着に戦略的な思考を働かせるヘラの姿は、かつて古代ギリシアの哲学者・プラトンが著書『国家』で描いた、勇敢さと慎重さを兼ね備えた政治指導者である哲人王を彷彿とさせる。
「戦いというものは、ときには起きるものであり、そのときに国民をいかに危機に陥れないか、そして豊かな生活をさせるか、そして、その魂の王国を守り、来世、天国へと導いていけるか。そうしたことが政治家として非常に大切なことであると、彼(プラトン)は語っているのです」(『理想国家日本の条件』より)
人々がリーダーを必要とするときに、立ち上がり、飢えや寒さ、虐殺から人々を救うべく知謀を巡らせる政治指導者が登場することほど心強いものはない。本映画には、そうした指導者が、神に愛され、その偉大な智慧を授かって国民を守り抜くことが出来るのだという、神話ならではのストーリーがドラマチックに展開されており、観る者の心を躍動させずにはおかない。
最後の希望が失われた時が、本当の始まり
ローハン国はウルフの軍勢によって追い詰められ籠城戦を強いられるが、食料も底を尽き、味方の援軍も期待できず、希望という希望が次々と失われていく。この絶望状態の中で、父の後を継いだヘラは、最後に残された、ある神秘的な力に一縷の望みをかけていく。
そして、国民を守る使命を果たすべく、自らがおとりとなって人々を安全な場所へと避難させつつ、すべての気力を振り絞って、果敢な挑戦に打って出るのだ。
「自分が出会っている試練を見て、自分の魂の器を知ることが大事です。『大変な試練が来ている』と思うならば、『自分には、それだけ、大いなる使命があるのだ。いま、自分の魂を磨いているのだ。自分の魂を磨くための問題集が用意されているのだ』と思わなければいけません。その問題集の内容を見て、問題集をつくった人、問題を出した人の考えを読み取り、『われ、何をなすべきか』ということを考えていただきたいのです」(『希望の法』より)
映画には、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作で暗躍する諸悪の根源・冥王サウロンの策動の一端も描かれるとともに、善と悪、国民を守る使命、自己犠牲、絶望に直面した時の希望など、奥深いテーマが随所に織り込まれており、映画三部作の世界観が、しっかりと継承されている。
遥か昔の北欧アズガルト文明で繰り広げられた神話的な戦いを通じて、国民を愛し守ることに命をかけた王の一族の姿を描いたこの作品は、逆説的ではあるが、未来に向けて、あるべき政治指導者の条件を考える一つの参考にもなるのではないだろうか。
『ロード・オブ・ザ・リング / ローハンの戦い』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督:月川翔
- 【配給等】
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
- 【その他】
- 2024年製作 | 134分 | アメリカ
公式サイト https://wwws.warnerbros.co.jp/lotr-movie/
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