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イランで昨年12月に女性のヒジャブ(スカーフ)着用を厳格化する新法「ヒジャブと貞操法」が施行される予定でしたが、今も施行が延期されています。

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イランでは、1979年のイスラム革命以来、女性は「貞潔を守るため」という名目で、公共の場ではヒジャブなどで髪を隠すことが義務化されています。

しかし、2022年9月に22歳の女性が、ヒジャブ着用の仕方が不適切だとして風紀警察に身柄を拘束され、拷問を受けて死亡した事件をきっかけに、イラン当局に対する大規模抗議デモが発生。デモが鎮圧された後も、都市部を中心にヒジャブを着用しない女性が増えました。

そうした中、23年9月にイラン国会でヒジャブなどをめぐる新たな法案が可決されます。新法は、女性が髪や腕、膝から下を隠さずに露出した場合、禁錮刑、罰金、車や携帯電話の没収、運転の禁止、給与や手当の減額、解雇、海外旅行や銀行口座利用の禁止など、現行より厳しい処罰を科すというものです。

例えば、ヒジャブ未着用を3度繰り返した女性は、最大15年の禁錮刑が科される可能性があります。また著名人や公人は純資産の8%が没収される可能性があり、ヒジャブを着用していない女性にサービスを提供した企業も、罰金や閉鎖の危険にさらされるといいます。

昨年12月中旬にも施行される見通しでしたが、政策を統括する最高安全保障委員会が施行を保留しました。ヒジャブ着用を厳格化すれば、国民の不満が爆発しかねないと判断したと見られています。

ちょうど昨年12月上旬、イランの人気女性歌手パラストゥ・アフマディ氏がヒジャブを着用せずに無観客コンサートをユーチューブで配信。アフマディ氏らは逮捕され、当局に対する強い批判が沸き上がっていました(アフマディ氏らは翌日釈放)。

保守強硬派のライシ前大統領の事故死を受けて、昨年7月に大統領選で勝利したペゼシュキアン氏も、大統領選中に新法について「曖昧な内容で見直しが必要」と述べていました。改革派とされる同氏は、ヒジャブをめぐる女性の扱いを批判し、女性の私生活には干渉しないとも言及していました。

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