《ニュース》

台湾で稼働している最後の原子力発電所が、今年5月に運転を停止します。これにより、台湾はアジアでは初めてとなる「脱原発」を達成することになります。

《詳細》

2016年に脱原発政策を掲げ、8年ぶりとなる政権交代を果たした蔡英文政権(民進党)は、25年までに「非核家園(原子力発電のないふるさと)」の実現を訴えました。17年に日本の国会に当たる立法院で、電気事業法改正案を可決させ、運転延長や新規稼働を認めない方向性を定めます。以降、原発を順次閉鎖しており、今年5月に、最後となる馬鞍山(第三)原子力発電所2号機の運転が終了します。

蔡英文政権は25年に脱原発を果たした後、「電力構成を石炭・ガス火力発電を80%、風力・太陽光など再生可能エネルギーを20%に再編する」という計画を進めていました。しかし、コロナ禍などの影響により、23年時点での再生可能エネルギーの割合は「9.5%」にとどまります。

台湾のエネルギー自給率も、非常に心もとないです。日本原子力産業協会のホームページによると、同国のエネルギー自給率は22年でわずか「2.73%」に過ぎず、エネルギー供給の大半を海外に依存しています。同年の総発電電力量のうち、原発は約9%を占めていたことから(3基稼働)、すべての運転が止まれば、電力供給はさらに悪化する恐れがあります。

当然、懸念されるのは台湾有事が起きたらどうなるのかという問題です。台湾の野党議員が「2022年、中国の台湾を取り囲む軍事演習は7日間続いた。天然ガスの備蓄量は十分だったのか」と立法院で問うと、政府は「ガスの備蓄をさらに増やす」と答弁し、備蓄でカバーしていく姿勢を堅持しています。しかし、天然ガスや石炭の備蓄は1~2カ月程度であり、台湾の電力供給は脱原発によって相当脆弱になる状況に変わりありません。

《どう見るか》