全国公開中
《本記事のポイント》
- 夢と情熱、努力によって挑戦し続けることの大切さ
- ライバルに嫉妬心を燃やさない
- 後押しをしてくれる師のありがたさ
遅咲きのインド人バレエダンサーが数々の試練に立ち向かいながら夢に向かって奮闘する姿をとらえ、世界各地の映画祭で多数の賞を受賞したドキュメンタリー。2020年のNetflix映画「バレエ 未来への扉」に本人役で出演したダンサーのマニーシュ・チャウハンのドラマチックな半生を描き出す。
インド・ムンバイに住む青年マニーシュはストリートダンスに興味を抱き、独学で練習を始める。ダンス大会で注目を浴びた彼はダンススクールへの入学を勧められ、両親から反対されながらも通うことに。
そこでバレエを教える気難しいイスラエル人・イェフダと出会ったことから、マニーシュはバレエの魅力にとりつかれていく。優れた運動能力と向上心を持つマニーシュは短期間で驚異的な成長を見せ、イェフダも彼の思いに応えるべくともに苦悩し努力する。しかしバレエダンサーとして活躍するには、マニーシュは年を重ね過ぎていた。
夢と情熱、努力によって挑戦し続けることの大切さ
本作の魅力は、21歳という年齢でバレエに出会い、その魅力に取りつかれて、プロのダンサーを目指して努力するマニーシュのひたむきな情熱と努力を描いたところだ。
タクシー運転手をしている年老いた父親や母親の世話をしなければならないこと。ライバルとして現れる若き天才ダンサー。大きな怪我と一年の休養のなかでの焦り。コロナ禍でのロックダウン。数々の高いハードルが、マニーッシュの前に立ちはだかる。
しかしマニーシュは「ダンサーと呼ばれたい」という願いに人生の目標を定め、そこに向かってひたむきに努力を続けていく。どんな苦しみや挫折の中でも、ひたすらに純粋さと明るさを失わないマニーシュの笑顔がとても印象的だ。
大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『アイム・ハッピー』の第3章「夢を持とう」の中で、夢の実現には、本人の目標設定と努力とともに、「あの世の力」も働いてくるとして次のように語っている。
「心のなかに持ち続ける力。こういう力がある人の場合、夢が、だんだん本当になり、じわじわ、じわじわと近づいてきます。ときには、自分が当初、思っていた夢とは違うかたちで実現することもありますが、何らかのかたちで、それに似たものや、"代替物"が出てきます。そういうかたちで現れてくるのです」
映画の中では、マニーシュが立ちはだかる壁を前にして、何度も絶望や悲しみを味わう姿が描かれているが、ニューヨークでプロのバレエダンサーとして活躍するラストシーンは、最後まで希望を捨てず、ひたむきに明るく努力し続ける姿勢が、夢を引き寄せる力そのものであることの見事な実証となっている。
ライバルに嫉妬心を燃やさない
マニーシュが通うムンバイのダンススクールには、年下で才能に恵まれたアーミル・シャーも通い始め、イェフダは彼ら2人のためだけに時間をとって指導するようになる。
彼らの類い稀な能力は英国ロイヤル・バレエ団の目にも留まり、若いアーミルはインド人として初の入学が決まる。そんなライバルの躍進に、マニーシュの心が揺れ動くところが映画の見所にもなっている。
当時のことを、マニーシュは次のように振り返っている。
「アーミルの才能を目の当たりにして、『もっと早く僕もバレエを始めていれば』『脚の形が彼みたいなら』と悲しい気持ちになったこともあります。アーミルがロイヤルに呼ばれた時、本心では僕も一緒に行きたかった。21歳でダンスを始めた僕は、年齢制限のために入れなかったカンパニーもあります。でも21歳で始めたから、ダンサーと呼ばれる現在があるわけで、これも運命でしょう。アーミルはロンドン、マイアミ、ロサンゼルスと拠点を移していますが、つねに連絡を取り合っていますし、インドに戻った時は一緒にイェフダのレッスンも受けています」(パンフレットより)
大川総裁は著書『未来の法』の第1章「成功学入門」の中で「大事なのは、ライバルや敵との競争に勝利することをもって、自分の人生の成功だと考えすぎないことです。『私は自分としての理想実現を目指している』というような、『わが道を行く気持ち』を持っていることが大事です」と指摘しているが、マニーシュがアーミルに対して嫉妬することなく、自らの技量に磨きをかけることに専念したことも、成功を引き寄せる上で大きな力となったのではないだろうか。
後押しをしてくれる師のありがたさ
この映画の"もう一人の主人公"とでも呼ぶべき人物が、マニーシュとアーミルのバレエ教師であるイェフダ・マオールだ。
イェフダはダンサーとして世界的に活躍した後、ルドルフ・ヌレエフやナタリア・マカロワをはじめとする世界中の偉大なダンサーたちを指導し、またサンフランシスコのダンサーズ・ステージとバレエ・マディソンでディレクターを務めたキャリアを持つ。
しかし、寄る年波には勝てず、欧米のダンス界で居場所をなくした後、インドのダンススクールにようやく職を見つけるのだが、そこで晩年の大きな輝きを放つことになる。
当初は、インドの混沌とした社会のあり方に嫌悪感を持っていたイェフダだが、教師を"グル"として尊敬し、そのアドバイスを尊重するインド文化を体現した、マニーシュの全幅の信頼を目の当たりにして、自らもマニーシュやアーミルのために全身全霊で成功への道を拓こうとしていくのだ。
このことについて、元ダンサーで、イェフダの弟子でもあった、監督のレスリー・シャンパインは次のように語っている。
「この映画は教師の変容の物語でもあります。イェフダは輝かしいキャリアの終わりにある孤独な頑固者だが、インドで、教師としての彼に敬意と愛情を捧げ、彼の家族となった生徒たちによって自分の人生が救われることに気付くのです」(パンフレットより)
映画の中でイェフダは「教師はともすれば教え子に嫉妬してしまいそうになります。しかし、その嫉妬によって判断を狂わせてはいけないのです」と語っているのがとても印象的だ。
決意とたゆまぬ努力によって成功の扉が開くことを描いた本作は、心の底から湧き上がる切なる願いには、突き破ることのできない壁など存在しないのだという真実を、改めて思い出させてくれる。
『コール・ミー・ダンサー』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督:レスリー・シャンパイン ピップ・ギルモア
- 【キャスト】
- 出演:マニーシュ・チャウハンほか
- 【配給等】
- 配給:東映ビデオ
- 【その他】
- 2023年製作 | 87分 | アメリカ
公式サイト https://callmedancer-movie.com/
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