全国で公開中

《本記事のポイント》

  • 今、熱い注目を集める武士の生き様: "真剣勝負"
  • 武士道の源流に位置する天御祖神
  • 真剣勝負から生まれる真の創造性

現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が、時代劇の"斬られ役"として奮闘する姿を描いた時代劇コメディ。侍の生き様の中に、末永く伝えるべき普遍の価値「真剣勝負の精神」を見出した着眼が秀逸だ。

57歳の安田淳一監督は京都で米農家を営みながら、わずか10名ほどのスタッフで映画をつくり上げた。単館上映だったが、SNSを中心とした映画ファンの口コミによって評判が高まり、100館以上の全国規模に公開が拡大され話題になっている。

今、熱い注目を集める武士の生き様:"真剣勝負"

天下統一を成し遂げ、戦国時代を終わらせた徳川家康をモデルにした時代劇ドラマ「SHOGUN 将軍」が、本年度のエミー賞で18部門を受賞。野蛮で残酷だとだけ思われていた日本の侍を、分断に苦しむ社会に統一と調和をもたらす存在として描いたところが、大きな反響につながったと言われている。

タイムスリップして現在に現れた幕末の武士を描いたこの映画が口コミで大きな評判を集めている理由も、本物の武士が本物の日本刀を使って、命がけの斬り合いをするという、真剣勝負の精神がリアルに描かれている点だ。そしてこの精神が、衰退の危機に瀕していた「時代劇ドラマ」を救うという筋立ては実に秀逸だ。

舞台は幕末の京都。幕府側として活動する会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は、倒幕派の長州藩士・山形彦九郎を討つという密命を受け、待ち伏せし刃を交える。しかし、その最中に落雷に討たれ、目を覚ますと現代の京都にある時代劇の撮影所へとタイムスリップしていた。

その後、新左衛門は、時代劇の"斬られ役"として生計を立てることになるのだが、実は、長州藩士・山形彦九郎も新左衛門よりも前にタイムスリップしており、芸能界で俳優として活躍していた。

2人は、敵味方の憎しみを越え、力を合わせて大作時代劇映画「最後の武士」をつくることになる。そのクライマックスシーンで、本物の日本刀を使って一対一で、命がけの斬り合いをすることで、失われた真の武士道精神を現代に蘇らせようというのが映画のクライマックスだ。

こうした武士の真剣勝負の精神について、大川隆法総裁は、その著書『現代の武士道』で次のように指摘している。

武士が刀を差して人と相対し、ときには技を競うこともあるということは、もちろん、生死、つまり『生きるということ』と『死ぬということ』とが、いつも裏合わせであることを意味します。したがって、そのような時代には、『一日一生』という言葉が、本当に現実としてありえただろうと思うのです。その意味で、武士の妻にも、『朝に出かけていく夫が無事に帰ってくるかどうかについては、保証の限りではない』という面はあったでしょうし、そういう覚悟ができていたところもあったと思います

「一日一生」の覚悟で、日々を生き抜いていた武士たち。それは鋭い刃の上を素足で歩くような緊張感の持続を必要としたことだろう。

今の日本を取り巻く厳しい国際情勢や、各地で起きる戦乱や天変地異などを考えるにつけて、かつて武士たちが持っていたこの真剣勝負の精神が改めて必要とされていると言えるのではないだろうか。それが、この映画への熱い共感となり、大ヒットにつながっていると言えそうだ。

武士道の源流に位置する天御祖神

極度の緊張感の中でも平常心を保ち続けるという武士たちの精神態度は、一体、どこから来たのだろうか。

大川隆法総裁は、約3万年前にアンドロメダ銀河から日本へ降臨し、日本文明の源流となったとされる存在、天御祖神(あめのみおやがみ)※が武士道精神の源流であるとし、その思想を次のように語っている。

『人間として立派に生きなさい。人から見られて、恥ずかしい生き方をしてはならない。むしろ、この地上に生きている間は、ほんの短い期間にしかすぎないので、その短い期間に、生きている間に堕落したり、自分の魂を穢したりするようなことをしてはならない』ということを言っていました。このへんに『武士道の始まり』があるというふうに思います」(『地球を包む愛』より)

武士道精神の真髄を記したとされる鍋島藩士・山本常朝の著書『葉隠』には、「武士道といふは死ぬ事と見つけたり」という有名な言葉が残されている。こうした冷徹な死生観に裏打ちされた武士たちの平常心のあり方は、極めて長い歴史を持った日本の根本思想だったのである。

※『古事記』や『日本書紀』よりも古いとされる古代文献『ホツマツタヱ』に出てくる日本民族の「祖」に当たる創造神。約三万年前、アンドロメダ銀河から宇宙船で約二十万人を率いて富士山の裾野に降臨し、「富士王朝」を築き、日本文明の基を創ったとされる。「正義」「礼節」「秩序」「調和」等を人々に説き、その教えは世界各国の古代文明に広がるとともに、日本の武士道の源流として現代まで脈々と受け継がれている。

真剣勝負から生まれる真の創造性

もう一つ見逃せないのは、こうした真剣勝負の精神が、創造性や成功の源泉であるということだ。

映画でも、本物の日本刀で殺陣を行うことを提案する新左衛門に対して、彦九郎が「面白い!」と応ずることによって、映画「最後の武士」が極めてリアルな真剣勝負へと進化し、大ヒットするプロセスが描かれている。

大川隆法総裁は、その著書『創造の法』の中で、この真剣勝負の心構えが創造性に不可欠であるとして次のように語っている。

仕事のみならず、何事においても、『人生は真剣勝負だ』と思わなければいけません。真剣勝負とは、本来、刀で命の取り合いをすることであり、負けたら今世の人生は終わりになります。そう思えば、やはり、考えうるかぎりのことを考えるはずです。鍛錬もするでしょうし、いろいろな作戦も考えに考えるでしょう。『負けたら、人生はそれで終わり』ということであれば、必死になります

1990年代のバブル崩壊以降、日本の産業競争力は力強いとは言えない状態がダラダラと続いている。こうした閉塞感を打破していくためにも、かつて確かに日本に息づいていた真剣勝負の精神と、そこから溢れ出てくる創造性を取り戻すことが必要だろう。現代に蘇る武士道精神を描いたこの映画は、それぞれが人生の血路を拓いていくための、何らかのヒントを与えてくれるのではないだろうか。

 

『侍タイムスリッパー』

【公開日】
2024年 全国公開中
【スタッフ】
監督・脚本・撮影:安田淳一
【キャスト】
出演:山口馬木也 沙倉ゆうの ほか
【配給等】
配給:ギャガ、未来映画社
【その他】
2023年製作 | 131分 | 日本

公式サイト https://www.samutai.net/

【関連書籍】

いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版

【高間智生氏寄稿】映画レビュー

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