《ニュース》

アメリカ政府の超党派の独立委員会であるアメリカ国際宗教自由委員会がこのほど発行した2024年の年次報告書で、イギリスなどヨーロッパの問題を取り上げました。「祈り」といった内面の行動が理由で逮捕された事件などを問題視したものです。

《詳細》

この報告書は、同委員会が毎年発行しているもので、中国や北朝鮮をはじめ、世界各国の信教の自由が侵害されている問題を取り上げ、深刻な問題については米国務省に対応を求めるものです。

5月に公表された最新の年次報告書では、イギリスで2022年、中絶手術を行うクリニックの付近に設定された「緩衝地帯」の中で祈っていたプロ・ライフ(中絶反対派)の活動家であるイザベル・ヴォーン・スプルース氏が逮捕された件について、「欧州政府が平和的な宗教表現を理由に個人を標的にした例」として挙げました。

イギリスでは中絶が可能な医療機関の付近で、中絶への賛成・反対を問わず、ビラを配布したり意見を表明することは、中絶を求める人の安全が脅かされるとして禁止しています。

スプルース氏がこの地帯の中で声を発することなく祈っていたところ、警察官に「祈っていますか」と問われて「心の中で祈っていたかもしれない」と答えると、逮捕されました。地元の裁判所は無罪判決を出しましたが、スプルース氏は数週間後にも同じ容疑で逮捕され、その後も、何度も路上で「祈っているのか」と尋問されたといいます。

スプルース氏の逮捕をきっかけに、イギリスでは、中絶クリニック付近の「緩衝地帯」におけるどのような行為に罰則を科すのか、内務省が指針を発表する方向です。23年12月に出された方針の草案では、「祈り」は違法とみなされるべきではないとしていましたが、反対派は「これでは法律が骨抜きになる」と批判しており、指針発表は7月以降にずれ込む見込みです。

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