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欧州人権裁判所(ECHR)はこのほど、スイス政府の気候変動対策が不十分だとして市民団体が国を訴えた裁判で、「人権侵害に当たる」との判決を下しました。

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訴訟を起こしたのは、64歳以上の女性からなるスイスの市民団体「Klima Seniorinnen(気候保護のためのシニア女性の会)」です。

2000人以上の女性が参加する同団体は2016年、スイス政府の推進する気候変動政策は目標や対策が不適切だと批判。高齢者や女性は気候変動による熱波の影響を特に受けやすく、「家から出られず、健康被害を受けた」として2020年、ECHRに提訴しました。

そしてECHRは9日、スイス政府が「気候変動に関して欧州人権条約上の義務を怠り、同条約8条の「私生活および家族生活の尊重を受ける権利」に違反するとして、人権侵害に当たると結論付けました。ECHRが気候変動訴訟で判決を下したのは、これが初めてだということです。

同団体のローズマリー・ウィルダー=ウォルティ共同代表は、「この判決は私たちだけの勝利ではありません」「私たちの勝利はすべての世代にとっての勝利です」と述べています。また、裁判所に駆けつけ共に勝訴を喜んだ環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏は、「これは気候変動にまつわる訴訟の始まりに過ぎない」と語りました。

なお、今回の判決には法的拘束力があるため、スイス政府は対策強化が義務付けられることになります。また、他の国際裁判所で審理されている同様の訴訟にも影響が及ぶ可能性があるということです。

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