《本記事のポイント》

  • 鈴木氏の発言を見ると、ロシアの勝利を期待しているわけではない
  • ウクライナ戦争が起きているからこそ、日本はロシアと対話すべき
  • 日本はロシアを敵に回せば、中露北の三正面作戦を強いられ、身を亡ぼす

"党への届け出なし"でロシアを訪問し、現地メディアの取材に"ロシアの勝利を信じる"と発言したとされる日本維新の会の鈴木宗男・参議院議員。同党は発言を問題視し、除名を検討していると各紙が一斉に伝えて外堀を埋めようとしているが、事実を冷静に並べると、過剰反応であると言わざるを得ない。さらにロシアとの対話を拒否し、敵に回そうという"空気"で政界が動くことが、日本を滅ぼしかない重大な危機をも招く。

ロシアの勝利を期待しているわけではない

まず、鈴木氏が本当にロシアの勝利を信じると発言したのか。問題の発言とされた、ロシア国営通信社「スプートニク」が配信した約3分の動画で、同氏はこう述べている。

「私は今、特別軍事作戦が継続されていますけども、ロシアの勝利、ロシアがウクライナに対してですね、屈することはない。ここは私は何の懸念もなく、100%確信をもってですね、私はあの、ロシアの未来、ロシアの明日をですね、私は信じていますし、あのー理解をしております」

これだけを見れば、ロシアの勝利を期待しているわけではなく、軍事的合理性などから見てロシアが勝つという、鈴木氏の従前の主張を繰り返しているに過ぎない。さらに同氏によると、もともとの取材は10分程度あり、「ロシアとウクライナは停戦すべきである」とも述べているものの、その部分が切り取られたという。

鈴木氏は6日に「ロシアの勝利を希望していないのか」と記者から真意を問われると、「いや希望ではなく、私はロシアが勝つと思っているんです。ウクライナが勝つと思いますか、今の現状で。(ウクライナは)武器をもらっている、資金も援助ももらっているから長引いているだけで、これをやめただけでも私は収まると思っている」と語っている。

すでにウクライナ戦争の勝敗は事実上決しているが、西側諸国のリーダーが体面などもあってあきらめがつかず、支援を継続して戦争を長引かせているという見方は、外国の専門家の間では一般的に言われていることだ。ウクライナの反攻作戦は失敗し、今年に入ってからは「ロシアに制圧された領土の方が多い」と米紙ニューヨーク・タイムズが報じている通りである(関連記事:「ウクライナは今年の戦闘では失った領土の方が多い、米紙NYTが報道」)。

戦争中だからこそ対話が必要

また、"党への届け出なし"でロシアを訪問したことについても、誤解が広がっているようだ。事務的なミスで党に必要な届け出を出すのが遅れたのが事実であり、許可なしにロシアを訪問しようとしたわけではない。

さらに今回の一件を契機として、日本の国会議員がロシアを訪問すること自体を批判する声がある。

しかし、日本が領土問題のあるロシアと本当に敵対すれば、中国・北朝鮮・ロシアの三正面作戦を強いられ、中国への脅威に対処するどころではなくなる。防衛費を倍増しても、勝ち目のない戦略環境に自らを追い込むことは愚の骨頂であり、ウクライナのゼレンスキー大統領の口舌に乗せられて、大局を見失ってはならないのだ。

そうした国益を考えた上で、日本はロシアとの対話の窓を閉ざしてはならない。日本をこれ以上危機の淵に追いやるべきではない。

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