《ニュース》
イスラエルとサウジアラビアの国交正常化をめぐって、米政府が運営するウラン濃縮施設をサウジアラビアに設けるという複雑な三者間合意を、イスラエル政府がバイデン米政権とひそかに協議していることが明らかになりました。
《詳細》
米バイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が20日、ニューヨークでの会談でサウジアラビアとの国交正常化に向けて意見を交わす中、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が21日、スクープとして報じました。
同紙は8月にも、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がイスラエルとの和平合意の最重要条件として、サウジがアメリカの援助によってウラン濃縮施設を保有することを挙げていると報じています。サウジは国交正常化の条件として前述のウラン濃縮に加え、アメリカによる安全保障やパレスチナ人に対するイスラエルの譲歩も求めているとのことです。
この度のWSJ紙によれば、アメリカ・イスラエル両国とも、サウジでのウラン濃縮を認める計画には今のところ同意していないとのこと。一方で、ネタニヤフ氏がイスラエル政府関係者に交渉開始を指示しているといい、同紙はこれを、サウジの核開発を容認する意向を示す「最も明確なサインと言える」としています。
またネタニヤフ氏との会談後、バイデン政府高官は、「サウジやその他の国との民生用原子力協力に関して何が行われるにせよ、アメリカの厳格な核不拡散基準を満たすことになる」と述べています。
三者間の合意に達すれば、サウジはイランに続き、中東地域においてウラン濃縮を公然と行う2番目の国になります。
なお日本語版では割愛されていますが、この度報じられたWSJ記事の原文では、イスラエルが公式には認めないものの中東における唯一の核保有国であり、敵対諸国(イスラム教国)による核保有を望んでいないことにも言及。イスラエルの核兵器開発技術者であったモルデハイ・ヴァヌヌ氏が1980年代、自国が核保有に向けてウラン濃縮などを進めていることを暴露した結果、18年もの間投獄されていたことにも触れています。
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