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大阪府が検討している「高校授業料の完全無償化」について、私立学校側の授業料負担が増える制度の設計が進んでいることが波紋を呼んでいます。

《詳細》

現在、大阪府では年収800万円未満の世帯について、年間60万円を上限に府が補助しています。そして私立高校では、この60万円を超える部分を私立高校側が負担することにより、無償化が実現しています。大阪府では私立学校への進学者数は増加傾向で、保護者の77.8%が「授業料無償化が進学に影響した」と答えています(令和5年3月大阪府教育庁私学課)。

吉村洋文府知事は4月の大阪府知事選で、世帯年収の要件を撤廃し、完全無償化することを公約に掲げて再選。2026年度から完全に無償化する方針を示しています。同時に、大阪府の私立高校の負担は、現在の計約9億5千万円から、計約17億円に増えると見込まれています。

大阪府私立中学校高等学校連合会は19日の会合で、「授業料の徴収で成り立つ私学教育の根幹に関わる問題で賛成できかねる」との意見でまとまり、制度への参加を留保しているといいます。記者会見では、「私学経営に介入する手法に断固反対」「経営難になれば非常勤の教師が増え、教育環境が悪化する」など、教育の質が保てないとの懸念が相次ぎました。

また大阪府は、府民が京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山の私立高校に通う場合も無償とするよう、各府県に協力を呼び掛けています。これに対し、2府4県の私学団体でつくる近畿私立中学高等学校連合会は、「無償にならない(大阪府外の)生徒に不公平になる」として、19日の臨時総会で「賛成できない」との意見をまとめています。

こうした意見に対して吉村府知事は、「私学も公教育を担う機関で、負担への協力をお願いしたい」とする一方、「私学自ら寄付を集めるなどして新たな財源を確保すべき」「制度から離脱する私学があるかもしれない」と話しています。

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