2023年7月号記事

スマホで頭が"溶けて"いく

まさかのあなたが認知症に!?

アルコール依存は肝臓をおかす。タバコ依存は肺をおかす。
一方で、スマホ依存は"脳"をおかす。
知性、理性、悟性が軒並み弱まり、老後の幸福にも影を落とす。

日本人が癌よりも恐れていると言われる病気がある。それが「認知症」だ。

保険会社などの調査で、「自分がなりたくない病気」と「親に患ってほしくない病気」の一位はそれぞれ、癌や脳卒中を上回って「認知症」だった。痛みや治療の苦しみに耐えても、頭だけははっきりしていたいと願う人が多いのだろう。

スマホで"一億総認知症"時代へ?

そんな認知症リスクを何倍も高めるとして関係者を戦慄させている現象がある。それが、スマートフォンの普及だ。

若い人のみならず、シニア層も徐々に使い方を覚え始め、1日2時間以上スマホを使う人の割合が、50代で2人に1人、60代で3人に1人、70代で4人に1人、という調査もある(*1)。

もっともスマホ依存は、他人の目がないところで発生しやすい。本人も使用時には記憶が飛んでいるという研究もある。私たちが意識しているよりも、多くの人々がはるかに深刻なスマホ漬けになっていると見られる。

その結果、後述する「スマホ認知症」とも言うべき現象が広がり、若い世代や働き盛り世代が、集団で知能低下している可能性がある。またスマホに依存するシニアも、アルツハイマーをはじめとする老後認知症に向かって"ばく進"していると見られる。

そして、現在のネット世代が65歳以上の多数を占める2060年、認知症のリスクが今の4~6倍になるという試算もある(*2)。今、私たちの社会が、恐るべき規模で変質しようとしているかもしれないのだ。

スマホを使っている時、私たちの頭の中で、一体、何が起きているのか。専門家の話を交えて調べてみた。

(*1)モバイル社会研究所「2022年スマホ利用者行動調査」より概算。
(*2)Laurie A・Manwellらの論文「Digital dementia in the internet generation」。

 

 

 

次ページからのポイント

日本認知症学会専門医・指導医 奥村 歩氏インタビュー

スマホでボケる理由とは?

認知症予防の専門家 結城 俊也氏インタビュー