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イギリスの国民保健サービス(NHS)はこのほど、性別違和を訴える18歳未満へのホルモン投与などのジェンダー関連治療について、不十分な研究と非常に乏しい科学的根拠によって行われているなどと指摘する報告書を発表しました。

《詳細》

10日に発表されたこの報告書は、小児科医のキャス・ヒラリー医師がイングランドのNHSからの委託により調査した結果を取りまとめたものです。

NHSは、子供や若者へのジェンダー治療を行う機関として、約30年前から「性自認・発達サービス(GIDS)」を運営してきました。しかし2020年以降、GIDSで治療を受けたことを後悔している患者から「もっと慎重な診断が必要だった」などと訴訟を起こされています。GIDSはNHSから独立した機関に「不適格」とされ、2024年4月に閉鎖されました。

キャス医師は、NHSが提供するジェンダー関連治療について「ガイダンスも科学的証拠も訓練もない」状態にあると指摘。性別違和の問題を訴えて訪れた未成年の患者が、うつや不安神経症など別の問題を抱えていた場合に、適切な治療が提供されないことを問題として挙げています。

現在、イングランドのNHSは、性別違和を訴える患者に対して16歳からホルモン治療の処方が可能となっています。しかしこの報告書では、10代へのホルモン治療が第二次性徴を抑える「思春期ブロッカー」として使われても、安全であると裏付けるだけの「しっかりした証拠がない」と問題視。この処方は臨床試験として始まったものの、試験の結果が出る前に多くの若者に使われたという経緯を指摘しました

また、そもそも医師の側が、性別違和を訴える子供や若者が、「トランスジェンダー」としてのアイデンティティを永続的に持ち続けるのかどうかについては、確実に判断できないなどと指摘。「人生を変える可能性のある治療を、成人期にどうなるのか分からないまま若者に行うのは異例のこと」であり、より慎重に対応すべきとしています。

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