2023年2月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第119回

釈党首

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

核を持つ国に囲まれる日本

政府が重い腰を上げ、ようやく国防強化の議論を本格化させました。自民・公明両党が「反撃能力」を認めることで合意。5年間で総額43兆円規模の防衛費を確保して、2027年度までに、アメリカ製巡航ミサイル「トマホーク」を最大500発買うとのことです。しかし、政府が想定する「反撃能力」が、国を守るのに十分な規模と内容かは大いに疑問です。トマホーク導入も、「27年度まで」という遅さで果たして間に合うのでしょうか。

現実味を帯びる核の使用

日本政府の想定を超え、国際情勢は遥かに切迫しています。

バイデン米政権に代わって以降、北朝鮮が狂ったようにミサイルを連射し、7回目の核実験に踏み切るかもしれません(12月14日時点)。一方の日本はというと、相変わらずの"遺憾砲"ばかり。11月18日には北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が北海道の渡島大島の近くに落下しましたが、その時も岸田文雄首相は「最も強い言葉で非難」したのみでした。

中国も軍拡のペースを速めています。米国防総省は11月29日、中国の軍事・安全保障戦略に関する年次報告書を発表し、「中国は2035年までに現在の4倍にあたる約1500発の核弾頭を保有する可能性が高い」と結論付けました。こうした核の脅威に対し、日本はあまりにも無防備です。「アメリカの『核の傘』が日本を守ってくれる」という甘えがあるのかもしれませんが、「核の傘が本当に機能するか」は定かではありません。

日米安全保障条約の第5条には「アメリカが日本を守る義務」が明記されていますが、どのような事態が起きたら守るのか、どの程度リスクを冒して守るのかまでは明記されていません。小野寺元防衛大臣も田原総一朗氏との対談で、「(核の傘が)具体的にどういう装備でどう展開されることになっているのか」「(議論はあっても)具体的に詰めたり、訓練として表に見える形ではしていないんだと思う」と語っています(*)。

それに、アメリカも自国を危険にさらしてまで日本を守ることはないでしょう。

異例の三期目に突入した習近平体制は、台湾への侵略の意図をむき出しにしています。中国にとって、一番邪魔なのはアメリカの介入です。そのため、「在日米軍基地が最初に狙われるのではないか」とも言われています。その際、アメリカや同盟国の日本が介入しないよう、「核を落とすぞ」と脅しをかける可能性が濃厚です。すでに2021年7月には「中国は、日本が台湾有事に一兵卒でも、一軍用機でも送って参戦した場合、ただちに日本に核攻撃を行う」という動画が公開され、注目を集めました。民間の軍事評論集団の動画ですが、軍民一体の中国においては背景に政府の意図があると考えるべきでしょう。

(*)サンデー毎日2022年12月11日号

正当防衛の範囲内で核装備の積極的検討を

こうした中、日本も核に対する抑止力の在り方を本気で考えるべきです。16年には当時の内閣法制局長官が、「憲法上、核兵器使用が禁止されているとは考えていない」と国会で答弁しており、これをタブーとすべきではありません。フランスも、シャルル・ド・ゴールが大統領を務めた1960年に核を持ちました。当時は米ソ冷戦真っただ中。隣国のドイツで東西陣営が衝突し、核戦争の可能性が高まっている時です。ド・ゴールは、北大西洋条約機構(NATO)の司令官やジョン・F・ケネディ米大統領らと会談を重ねた結果、「ヨーロッパの同盟国を守るために、アメリカが核兵器を使用する保証などどこにもない。アメリカの核兵器による抑止力が有効に機能するかどうか、誰も知らない」と判断。アメリカの反対を押し切り、核装備を進めました。「アメリカは、パリのためにニューヨークを犠牲にすることはない」ということです。アメリカ一国で世界を守ることが難しくなった今、東アジアの正義と平和のために、日本も肚を据えた議論と判断が必要です。

幸福実現党は日米同盟を基軸としつつも、憲法9条改正と正当防衛の範囲内での核装備の積極的検討を訴えてきました。防衛費の増額はもちろん必要ですが、どうすれば、日本が中国や北朝鮮の核の恫喝に屈せず国民を守れるのか、もう一段、踏み込んだ議論と決断が必要です。

今こそ、本気で国防強化を行うべきではないでしょうか。

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1961年、パリの大統領官邸・エリゼ宮殿での会談を終え、並んで歩くケネディ米大統領とド・ゴール仏大統領。画像:John Fitzgerald Kennedy Library, Boston