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ヨーロッパの電力会社を襲っているエネルギー危機をめぐり、先物取引の損失で金融危機が起きる可能性が浮上し、ヨーロッパ連合(EU)はその対策に迫られています。

《詳細》

先物取引は、大きく分けて「デリバディブ市場」と「スポット市場」があります。電力市場が自由化されているヨーロッパの場合、電力取引の大半は中長期な取引で使うデリバディブで行い、足りない分はスポット市場で調達するのが通例となっています。

電力会社は電気を販売する際、将来の販売価格の変動リスクを減らすため、リスクを回避(ヘッジ)する取引も同時に行っており、担保として一定の証拠金を確保しています。化石燃料の価格が突然下落し、それに連動して電力価格が下がり、デフォルト(債務不履行)になるリスクに備えるためです。

しかし足元の電力価格が急騰した結果、電力会社は、デリバティブで調達した電力を価格に見合わない値段で売らざるを得なくなり、損失が拡大。これに伴い、担保となる証拠金が急上昇しており、電力会社の運転資金では賄えなくなっているのです。

フィンランドのリンティラ経済相は、「これはある意味、エネルギー業界のリーマン・ブラザーズとなり得る要因だ」と述べ、何もしなければ「金融市場の他の分野に悪影響をもたらす恐れがある」と警告しています。

証拠金の総額は不明とされています。ただ、ノルウェーのエネルギー大手エクイノールの幹部は、イギリスを除いたヨーロッパでは、保守的な見積もりで少なくとも1兆5000億ユーロ(約215兆円)必要になると指摘しています。

そんな中、英紙フィナンシャル・タイムズはこのほど、危機を脱する方法として、「第1に、危機的状況にあることを理由に取引所に担保金の積み増しを停止するよう求めること。第2に、マージンコール(追加の証拠金拠出)に応じるための担保の種類を拡大して電力会社の手元資金に余裕を持たせることだ。第3に、各国政府に電力会社の救済を求めることだ」と指摘。追加担保の拠出を止める第1の案を取れば、今度は取引所が破綻するリスクに直面するため、政府と銀行が電力会社をバックアップする第2、第3の組み合わせを提言しています。

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