《本記事のポイント》
- 供給側の解決策が王道
- 円への信頼を高めるしか円安を止める方法はない
- 健全財政と勤勉の精神による付加価値の創造が円の暴落を抑止する
前編で触れた( https://the-liberty.com/article/19705/ )物価高対策に事業規模13兆円を充てる政府の政策は、お金をばら撒いて市場に貨幣を増やし、円安を加速する。一方で、ドル売り・円買いで、円の暴落を防ぐブレーキをかけているため、アクセルとブレーキを同時に踏むという矛盾に陥っている。
ただドル売り・円買いによって通貨安に歯止めをかけ続けるには、外貨準備が必要である。手持ちの外貨は、6月末の段階で昨年末と比べて6.7%も減少し1兆3112億ドル(約177兆円)となり、減少幅は2000年4月の統計開始以降で過去最大となっている。
供給側の解決策が王道
では、どうすべきなのか。
「インフレを止める方法は、財とサービスの供給を増やし、貨幣供給を減らすことに尽きます」
こう述べるのが、レーガン政権およびトランプ政権で経済顧問を務めたアーサー・ラッファー博士だ(「ザ・リバティ」8月号本誌)。
利上げや量的緩和をやめて貨幣供給を減らすことができないというなら、すぐにでも財とサービスの供給を増やすことが重要だ。
需要に対して供給が不足しているため、物価高になっているなら、その主たる原因であるエネルギー、および食料の供給を増やすのが王道となる。エネルギー不足には原発の再稼働を急ぐべきであり、代替食料品を含め食料の増産を急ぐ。これがサプライサイドからの処方箋となる。
円への信頼を高めるしか円安を止める方法はない
また、市場における円への信頼について考えてみよう。
現在、海外のヘッジファンドが日本国債の空売りで、国債価格を意図的に下落させ、金利を上昇させることで、利益を得ようと仕掛けて来ている。
長期金利を抑えるために日銀は国債を買い入れ続けているが、無限に続けることはできない。
実はこの問題を、大川隆法・幸福の科学総裁は、2016年の時点で著書『地球を救う正義とは何か』で、こう述べている(関連書籍参照)。
「日銀は、国債を引き受ける代わりに、お金、日銀券を流出させているわけですが、このまま行くと、来年(二〇一七年)には五百兆円ぐらいに達するはずです。五百兆円という金額については、日本全体のGDP、いわば"全売上″と考えていただいても結構です。日本人の経済活動によって生まれている売上の合計です。それと、日銀が買い支えている日本国債の金額とが、来年、同じになるのです。これは、どう考えても危険水準に達しています。もし、この国の未来が明るいものにならず、日銀の引き受けた国債が"紙くず″になったら、日銀自体が完璧に崩壊するのです」
この翌年、大川総裁の予測通り、国内総生産に匹敵する額の国債を日銀が保有した時、ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこれを報じた(Bank of Japan's Bond and Stock Holdings Top 100% of GDP)。同紙はアメリカもリーマンショック後、量的緩和で国債の購入を続けてきたが、連邦中央準備銀行(FRB)の国債保有量はGDPの約30%であって、GDPの額に匹敵するほどの国債を引き受けていないと説明を加えている(当時は30%ほどで、現在は45%)。
当時、大川総裁はイギリスのEU離脱問題もあって外国の危機に十分に気が付いていないとしながらも、「日銀による資金供給には、もう限界が来ています」と警告を発していた。
日本が抱える問題が、ウクライナ紛争を契機としたインフレによって急速にクローズアップされた形となったのである。
今後も長期金利を下げるために国債の爆買いを続ければ、市場に供給される貨幣供給量が増えるので、円の価値を下げ、インフレを高めてしまう。
海外のヘッジファンドは日本の矛盾をついて仕掛けている上、日本人でさえ日本の未来を悲観し、円を外貨に換える人が増えた時、後戻りできなくなる。
健全財政と勤勉の精神による付加価値の創造が円の暴落を抑止する
では根本的にこうした問題を防ぐにはどうすべきか。日本が直面する課題に詳しい西一弘氏は、このように話す。
「円安の理由はさまざまに論じられていますが、意外と言及されていない点は、『財政規律」についてです。
ここまで膨れ上がった債務は、もはや返済不可能なレベルに達しており、そのため、日銀が市場の国債を買い取ることで、通貨(円)を大量供給している状況です。
日本の経済規模が変わらないのに、円の発行量だけが増えていることが、円の値打ちを下げる原因となっています。
ですから、その根本原因であるバラマキ政治を改め、財政規律を回復させることが急務です。投機筋がいかに円を売ろうとしても、財政規律が高い国の通貨を暴落させることは難しいでしょう。
さらに言えば、日本の通貨(円)で買えるものは、基本的には日本で生産したもの(GDP)ですから、生産量が増えることが、円の値打ちを下支えすることになります。
その意味で、勤勉と創意工夫の精神を取り戻し、経済成長すなわち生産量を毎年増加させることが必要です。
そのためには、(1)勤労の精神を阻害する税金をできるだけ軽くすること、(2)勤労の精神を阻害する、行き過ぎたバラマキを改めることが極めて重要です。これは、ラッファー博士が唱えるサプライサイド経済学の考え方そのものです」
日銀による事実上の財政ファイナンスで、日本の財政規律は緩んだ上、勤勉に働く精神が失われつつある。経済の立て直しには、勤勉、自助努力、創意工夫で手堅く付加価値を創造していくことが大切であることを、忘れてはならない。
円の価値を暴落させることなく日本経済を浮上させるには、生産力を高めるとともに財政健全化が急務である。
【関連書籍】
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