国際ジャーナリスト、ロバート・カプラン氏が米外交誌「フォーリン・ポリシー」に「ビンラディン余波」という論考を書いている。地政学にも精通したジャーナリストで、中東から東アジアまでの今後の国際情勢の見通しを語っている。以下はポイント。

  • ビンラディンの死はアルカイダや中東に大きな意味を持つが、ワシントンにおいてより驚くべき意味を持つ。ビンラディンが米軍特殊部隊に殺されたことは、アメリカの士気を著しく上げる一方、アルカイダの士気を下げる。いまアメリカの安全が高まったことで、オバマ大統領は政治的に国防予算を減らしやすくなった。

  • パキスタンとは短期的に緊張が高まるが、構造的に良好な関係に戻るだろう。アメリカは、パキスタンがアルカイダの指名手配者を見つけるための支援をする限り、パキスタンに根本的な変化を決して求めない。これまでもパキスタンはアメリカがアルカイダの幹部を殺害するのを黙認しており、関係は正常化し得る。

  • ビンラディン殺害はアフガンでの米軍の威信を高め、旧タリバン政権の勢力がアフガンの現政権と話し合いやすくなる。同時に、アメリカはテロ戦争の勝利を宣言しながら、2014年までに米軍を撤退させることができる。

  • アルカイダはアラブ民主化運動ですでに打撃を受け、今回さらに弱体化している。

  • いまオバマ大統領は長期的に東アジアを注視し始めている。東アジアは世界経済の中心として発展し、海軍活動も活発化しており、(アメリカは中東から)いったん退いて、次を考えるときだ。

  • オバマ大統領は、(中国が支配を強める)南シナ海で同盟国を安心させるなど、ブッシュ前大統領よりも積極的で創造的な東アジア外交を展開している。リビア介入では米軍は地上軍を派遣しないので、泥沼化しないだろう。オバマ政権はブッシュ父政権以来、外交政策において最も有能な政権になり得る。

カプラン氏は、オバマ政権の外交・安全保障政策を高く評価しているが、米外交のアジアシフトは国務省や国防省のスタッフが立案したもので、政治家と官僚との意思疎通がうまくいっているからだとされる(オバマ本人は世論調査に考え方が左右されるとか)。7月から始まる米軍のアフガン撤退がスムーズに完了していくならば、オバマ外交の対中国シフトが本格化することになる。(織)

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【5月6日分ニュースクリップ一覧】
「アメリカ外交は東アジアにシフトする」 国際ジャーナリスト・カプラン氏
円、一時79円台へ
米のビンラディン殺害はパキスタンの主権侵害か
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