© 2019 映画「高津川」製作委員会

 

2022年3月号記事

Movie

高津川


神仏がつくられた日本の美しさ

【スタッフ】
原作・脚本・監督:錦織良成
【キャスト】
出演:甲本雅裕、戸田菜穂、大野いと、田口浩正、高橋長英、奈良岡朋子ほか
【配給等】
配給:ギグリーボックス
【公開日】
2022年2月11日より新宿バルト9ほか全国順次公開

 

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© 2019 映画「高津川」製作委員会

 

【レビュー】

ダムが一つもない日本唯一の一級河川・高津川。島根県にあるその清流の流域で牧場を経営する斉藤学は、妻を亡くし、母と娘、息子の竜也の4人暮らし。「神楽」の舞は歌舞伎の源流といわれ、代々受け継がれてきたが、竜也が神楽の稽古をさぼりがちなことから、この地を離れて都会に出たいのでは、と、息子の進路を危惧する日々だった。

そんな時、学たちの母校である小学校の閉校や、高津川上流のリゾート開発の話が持ち上がり……。

この世のものとは思えないほど神秘的な自然と共に生きる人たちの営みを丁寧に追いながら、「若者の流出による人口減」「祭りや技術の伝承の存続」、さらには安直なリゾート開発による環境・生活破壊や独居高齢者、介護問題など、ありとあらゆる「地方の危機」のありのままを伝える。

ただ、そこに悲壮感はない。映し出されるのは、大切な人を想い、お互いを支え合い、自然の恵みに感謝し、伝統を守り伝え続ける人々の姿だ。日本の原風景ともいえるその生き方は、同時に日本人の多くが忘れ去ろうとしているものかもしれない。

日本が抱える危機、一人ひとりの悩み。全てを包み込み、それぞれの答えをそっと導き出してくれるような、限りなく美しく、愛おしい、日本が誇るべき映画。

 

ザ・リバティWeb シネマレビュー

「高津川」

(星4.5。満点は5つ)