中国は2月、北京冬季五輪を開催する(一部の国々が「外交的ボイコット」を表明)。そして翌3月、全国人民代表大会と政治協商会議が開かれる。だがその船出は順調とは言えない。本稿では同国の問題の所在を明らかにし、2022年の中国を占ってみたい。

「第2文化大革命」の反動が爆発する!?

習近平・国家主席は、政権誕生後まもなく「第2文化大革命」を発動した。主に以下の内容である。

  • 西欧的価値観(自由・民主主義や法の支配)を否定

  • 人権派弁護士を逮捕・拘束

  • 宗教を弾圧──法輪功・イスラム教はもとより、北京のお墨付きである中国天主教愛国会に至るまで。

  • 密告を奨励──教師が中国共産党の主張と違った内容を学生に教えると、学生が党へ通報する。最近、上海震旦職業学院の宋庚一が「南京大虐殺」に関して、その数字が不明だと学生たちに説明した。その話を聞いた一学生(董姓)が党へ報告し、宋は免職となった。

  • 学習塾やピアノ等習い事の塾、及びゲームを規制。

  • 新疆ウイグル自治区での弾圧──100万人以上のウイグル人が強制収容所に収容され、奴隷労働を強いられている。

  • チベット自治区、モンゴル自治区での圧政──両自治区では、徹底した中国語教育が行われ、チベット語やモンゴル語の学習・使用が制限されている。

  • 香港の自由・民主を抑圧──返還後、50年間不変だった香港の「1国2制度」を、特に2020年「香港国家安全維持法」の制定・施行で、「1国1制度」へ変貌させた。

 

 

社会主義路線爆走で経済崩壊

また習近平政権の経済政策は、トウ小平の「改革・開放」路線を捨て、社会主義(「民進国退」から「国進民退」)へと逆戻りしている。具体的には以下の内容が挙げられる。

  • 「混合所有制」改革の実施──活きのよい民間企業とゾンビあるいはゾンビまがいの国有企業を合併。

  • 江沢民派やトウ小平派と関係が深い企業にメス──蕭建華の投資ファンド「明天系」やトウ小平の孫娘の夫・呉小暉の「安邦保険集団」等。

  • 「共同富裕」の名の下に、アリババをはじめ、新興IT企業に"慈善事業"へ参加するよう要請。

  • 企業内で「習近平思想」を学習──たとえ同思想を学んでも企業の成長に役立つかどうか疑問。

  • 庶民に株の購入を奨励──2015年、株バブル崩壊で約9000万人の庶民が被害に遭う。

  • 中国共産党と繋がりの強いP2P(庶民から小口の資金を募り、中小企業へ融資)が破綻。

  • 脱税したという理由で、范冰冰ら芸能人から巨額のカネを押収。

 

 

世界を敵に回す外交政策

また中国は、次のような形で米国の覇権に挑戦している。

  • 当面「第一列島線」の突破を狙う。

  • 台湾に対する侵攻をちらつかせる──台湾の「国際生存空間」を狭めるため、台湾と国交のある国を一国でも減らそうと試みる。

  • 北京は、依然「戦狼外交」を継続中──中国はオーストラリアとの関係悪化により、豪産石炭輸入をストップ。そのため国内は電力不足に陥る。

  • 「一帯一路」構想の挫折──コロナ禍、同構想関係国の経済が思わしくないので、中国への借款返済が滞る。

 

 

あちこちに危険な"アキレス腱"が!?

そうしたなか現在、中国は以下のような"アキレス腱"を抱えている。

  • 右肩下がりの中国経済──「改革・開放」路線の放棄による。

  • 不動産バブル崩壊の予兆──中国全不動産会社が抱える負債は約560兆円だという。

  • 中央政府の巨額の財政赤字──GDPの300%以上。

  • 三峡ダム──ダムが湾曲し、防護石が欠損。いつ決壊しても不思議ではない。

  • 国内や党内で渦巻く不満──例えば、2021年6月、南京師範大学中北学院で職業技術学院との統合案が浮上。学位の価値が下がることを懸念した師範大学の学生数千人が抗議デモを行い、学長を人質にとる。公安が介入し、事件は解決。一方、曲青山の「『改革・開放』は党の偉大な覚醒だ」という論考が『人民日報』(昨年12月9日付)に掲載。トウ小平の名が7回、江沢民と胡錦濤の名がそれぞれ1回ずつ登場するが、習近平の名はゼロ。この中で「改革・開放」が称賛され、「文革」が非難されている。

 

こうした状況も鑑みれば、2022年、中国は次のような状況になる公算が大きい。

第1に、同国経済は益々失速する。それに伴い、習近平政権は、国内の締め付けを更に厳しくするだろう。

第2に、習政権は、対外的強硬策を継続する。しかし、米欧は中国の「力による現状維持変更」を看過できず、「対中包囲網」は徐々に狭まるのではないか。

第3に、中国国内で新型コロナは完全に終息するのか不明である。依然、西安市や天津市など一部地域で新型コロナ蔓延のニュースが流れている。

第4に、「彭帥問題」(彭帥選手が元最高幹部の1人、張高麗から性的暴行を受けたと微博に投稿)が国際的に後を引くだろう。最近、シンガポールメディア『聯合早報』が彭帥にインタビューを行った。だが、彭は性的暴行に関してSNSに投稿したことはないと全面否定した。また、自身は当局からの監視を受けず、自由であると語った。

以上のように、習政権は、綱渡りのような厳しい政権運営が強いられるのではないか。

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アジア太平洋交流学会会長

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

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