2021年8月号記事

ニッポンの新常識

軍事学入門 13

戦後体制の根は深い

弱体化する防衛産業

社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について専門家のリレーインタビューをお届けする。

桃山学院大学法学部教授

松村 昌廣

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(まつむら・まさひろ)
1963年、神戸市生まれ。関西学院大学卒業後、米オハイオ大学にて政治学修士号、米メリーランド大学にて政治学博士号を取得。ハーバード大学オーリン戦略研究所ポストドクトラル・フェロー、米国防大学国家戦略研究所客員フェローなどを務め、現職。近著は『米国覇権の凋落と日本の国防』(芦書房)。

近年、防衛産業から撤退する企業が相次いでおり、産業全体が地盤沈下していることを懸念する声が高まっています。

まず前提として指摘したいことは、日本にはそもそも、主要国にあるような軍需を専業にする「防衛産業」は存在しません。大半の日本の大企業にとって、自衛隊向けの製品を手掛ける防衛部門は非常に小さく、その売り上げも多いところで全体の10%程度に過ぎません。

さらに、日本企業の取引相手は原則全て防衛省・自衛隊であり、国有企業に似た存在であることも他国と異なる点です。ほぼ100%を官側の意向に合わせ、基本的には待ちの状態。一般企業のようにリスクをとって、外国市場に出て利益を上げるという光景は見られません。

こうした日本特有とも言えるメンタリティーが、防衛産業の発展を阻んでいる大きな要因と考えます。