日本では新型コロナウィルスの「第三波」が来ているとされ、各地で経済活動への自粛要請が出され始めている。しかし、すでに第一波・第二波の営業自粛で経営状況がひっ迫し、次なる自粛に応じれば、倒産してしまうという企業・店舗も多いだろう。

アメリカでは、あるヘアサロン店主が州の命令に反して営業再開し、投獄された。しかし世論の後押しにより釈放され、12月に実施される州上院選に出馬し、話題となった。彼女の戦う信念とは。

※2020年11月号本誌記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの。


Interview

 

米テキサス州の上院候補

シェリー・ルーサー

(Shelley Luther)19人の従業員を抱えるヘアサロン「サロン・アラ・モード」の店主。2児の母でもある。

3月中旬、コロナの感染拡大を受けて、テキサス州知事は外出制限令を発した。外出制限の期間が延長される度、2児の母であるルーサー氏と従業員の生活はひっ迫。家族と従業員を守るため、お店を開けた。

ダラスの裁判所は営業をやめるように命令。彼女は応じることなく、5月5日に逮捕された。判事たちは、彼女の行動を利己的だと批判。ルーサー氏と裁判所の主張は平行線をたどった。

翌6日、禁錮刑を言い渡された彼女に集まったのは、即時釈放の要求と称賛の嵐。そこには、州知事も名を連ねた。そして7日、釈放された。

多くの声に推され、彼女は今、11月の大統領選と同時に行われる州の上院選に出馬している。

 

◆ ◆ ◆

 

──なぜ州の外出制限令に逆らってまで、ヘアサロンの営業を再開したのでしょうか。

4月に外出制限令が発令された当初、お店を閉めていました。

収入がなくなり、家族や従業員の生活を維持することすら厳しい状態に追い込まれました。公的機関に連絡してみても、どこからもまともな返事はもらえませんでした。

収入の目途が立たなくなり、私には営業を再開するほかに選択肢はなかったんです。

 

──その後、度重なる行政指導に屈せず、投獄されても、営業する意志は曲げませんでした。

家族や従業員のために営業していましたが、不思議なことが起こります。世界中の人たちから応援が届き始めた。こんなに多くの人が、行き過ぎた政府の介入に反対しているんだと気づかされたのです。

特に印象に残っているのは、退役軍人の方から、彼に贈られた勲章と共に手紙を頂いたこと。手書きで、「私が戦争に戻ることになったら、あなたと共になら戦えると思う」とありました。そんなことを言われたら、引き下がることなんかできません。

 

 

「どうしても黙っていられなかった」

──テキサス州の上院選挙に出馬すると伺いました。

それまでは大統領選には投票するくらいで、政治に強く関心があるタイプではありませんでした。

そんな私が出馬する決意を固めたのは、「何もせず黙ってはいられない」という気持ちが止まらなかったからです。

そうすると、驚くべきことに、テキサス州の上院の31ある議席に欠員が出て、それが私の選挙区だったんです。

これは、間違いなく神のご加護だと思いました。目の前にあるドアが開かれていくように感じました。

 

──あなたの生き方は、まさにアメリカの精神にかなっていると思います。リベラルな人たちの運動をどう見ていますか。

学校から神様を排除した時から、私たちが依拠する価値観を見失い始めたと強く思います。そのころから、銃犯罪など暴力が横行しています。

神を捨てるや否や、今のリベラルの運動が始まった。そして今、私たちは迷走しています。

苦難・困難な環境下でも神に頼れば、再び私たちは幸福を見出せると思います。

 

──最終的な目標は何ですか。

神に仕え、神が望んでいることをすることです。立候補するなんて夢にも思っていませんでした。まだ結果がどうなるか分かりません。だからこそ、自分の持ち場で、できる限りのことを成し、ただ神の望まれることに従いたいと思っています。

 

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