今回の米大統領選でオクトバー・サプライズとなったのは、10月14日、15日付ニューヨーク・ポスト紙のスクープ記事だ。
バイデン候補の汚職疑惑を報じた同記事が掲載されると、ツイッター社とフェイスブック社は即日、拡散を制限する措置を講じた。これにより、ビッグ・テック企業による"検閲"を問題視する議論が巻き起こり、全米を揺るがす大問題となっている。
スクープ記事は、バイデン候補の息子ハンターの海外ビジネスをめぐり、汚職の証拠となるEメールが発見されたことを報じている。さらに22日には、ハンターのビジネス・パートナーだったトニー・ボブリンスキ(Tony Bobulinski)氏が内部告発となる記者会見を行い、疑惑の証人が公の場に現れた。すでにFBIは証拠となる大量のデータを押収しているほか、ボブリンスキ氏もFBIに対して証言を行ったとしている。大統領選投票日を目前にして、FBIによる捜査の行方は予断を許さない。
こうした情勢を受けて、トランプ大統領は、第2回候補者討論会のほか、連日の激戦州での演説集会でも、「バイデンは、腐敗した政治家(corrupt politician)だ」と繰り返し訴えている。ちなみに、ニューヨーク・ポスト紙は、日刊紙としては全米第4位の発行部数となるが、その公式ツイッターは、スクープ記事以来、約2週間にわたりロックされた状態となった。
世界のメディア史に記録される、前代未聞の波紋を巻き起こした記事につき、当誌はこのたび、ニューヨーク・ポスト社から翻訳権の許諾を受けた。いったい、この記事のどこの、何が問題だったのか──。ここに日本語訳の全文を掲載して、ありのままの事実を、日本の読者に公開する。
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ニューヨーク・ポスト紙10月15日付
「ハンターが、バイデン家のために中国企業から資金を得ようとしていたことが、Eメールから判明」
ニューヨーク・ポスト紙に寄せられたEメール記録によると、ハンター・バイデンは、中国で最大規模だったエネルギー会社との間で、儲かるビジネスを追求していた。これについてハンターは、「私や家族にとっては興味」がそそられるものだ、と記していたことが判明した。
2017年5月13日に、ハンター・バイデン宛に送信された「期待すること」との標題のEメールでは、詳細不詳のベンチャー投資に関わる6人の人物のための「報酬パッケージ」が、具体的に示されていた。
「偉い方の分として?」と記載されたハンター氏宛のEメール
ハンターに関しては、「CEFCとの合意によるが、会長もしくは副会長」と記されていた。ここで言及されているのは、かつて上海に本社を置いていた企業グループのCEFCチャイナ・エナジー(中国華信能源)社であるとみられる。
Eメールでは、ハンターの報酬を「850」と記載しているほか、「ハンターが期待するところは、彼から説明がある」とも記されている。
さらにEメールでは、新会社の「株式」もしくは持ち分の80%を、4人の人物で均等に分け合うとする「仮契約」の概要が記載されている。この4人の人物は、イニシャルで表記されているが、このEメールの送信者および3人の受信者のものと一致している。そのうちの「H」と記される人物は、ハンターを指すとみられる。
この取り決めのリストでは、「ジムには、10(%)」「Hのものとしておく10(%)は、偉い方(the big guy)の分として?」とされている。ジムと「偉い方」にあたる人物に関しては、それ以上は不詳だ。
このEメールの送信者の名前は、国際コンサルティング企業J2cR社のジェームズ・ギリアー(James Gilliar)となっているが、「もし足りないところがあれば、臧(Zang)と詳細をつめます」と記している。「臧(Zang)」とは、CEFCチャイナ(エナジー)社のエクゼクティブ・ディレクターだった臧建軍(Zang Jian Jun)を指すとみられる。
このEメールは、デラウェア州のパソコン修理店の店主が語るところでは、浸水したラップトップのMacBook Proから修復された大量のデータのなかに含まれていた。このパソコンは、2019年4月に放置されたまま、受け取りがなかったとのことだ。
コンピューターはFBIに押収されたが、店主は、このデータを複製していた。そして、前ニューヨーク市長ルーディ・ジュリアーニ(Rudy Giuliani)氏を通じて、今週、ニューヨーク・ポスト紙に提供された。
また、ハンターが、2017年8月2日に送信した一連のEメールのなかでは、現在は消息不明となっているCEFC(チャイナ・エナジー)社の葉簡明(Ye Jianming)会長との契約として、持ち株会社の半分を所有することにより、ハンターに年間1000万ドル(約10億円)以上が提供されるとされたことも、記されていた。
報道によると、葉(会長)は、中国の軍や情報機関との関係がある人物であり、2018年のはじめに中国政府当局に拘束されて以来、消息が途絶えているとのことだ。また、今年のはじめに、CEFC(チャイナ・エナジー)社は倒産している。
ハンターが(Eメールに)記している内容によると、葉(会長)は、当初よりも良い条件にしてくれて、CEFC(チャイナ・エナジー)社との3年間のコンサルティング契約として、「紹介(業務)料だけ」で、年間1000万ドル(約10億円)が支払われることになった、とのことだ。
ハンターは、こう記している。「会長は、マイアミで面会した後で、より長期間で、儲かる内容となるように、契約条件を改善してくれた。私と彼で、持ち株会社を50%ずつ所有することになった」
「コンサルティング料は、私たちにとっては収入源となるので、JV(ジョイント・ベンチャー)のパートナーとして、株式と利益(を分け合いたい)との会長からの提案は、私と家族にとっては、とても興味がそそられた」
2017年8月1日の日付となる写真では、「ハドソン・ウェスト社」の所有権をハンター・バイデンと「会長」とされる人物で、50対50で分け合うことを示す、手書きのフローチャート図が撮影されていた。
手書きのフローチャート図
先月には、ロン・ジョンソン(Ron Johnson)上院議員(共和党、ウィスコンシン州)とチャック・グラスリー(Chuck Grassley)上院議員(共和党、アイオワ州)が、ハンターの海外ビジネス取引についての調査報告書を発表している。そのなかでは、ハドソン・ウエスト3という社名の会社が、2017年9月に設けていた信用枠があったことが、判明している。
この信用口座によってクレジット・カードが発行されていたのは、ハンター、叔父のジェームズ・バイデン、ジェームズの妻サラ・バイデンだった。(合計で)10万ドル(約1000万円)以上もの高額となる品目の購入に充てられ、航空券代、アップル・ストアでの多数の品目の購入代金、医薬品代、ホテル代、レストラン代に使用されていた。
報告書によると、会社はすでに解散されているが、会社のオーナーとなっていた2社のうちひとつは、ハンター・バイデンの法律事務所オワスコPCだったとのことだ。
このEメールは、ハンターから董功文(Gongwen Dong)氏に送信されたものだった。董氏については、2018年10月のウォールストリート・ジャーナル紙で、葉会長の関連会社が、マンハッタンにある2棟の高級マンションを8300万ドルで購入した件に関係したとされている。
また、董氏は、ロングアイランドのグレイトネックに広大な邸宅を所有しており、香港に本社をおく投資会社のカム・フェイ・グループのCFOを務める人物だと報じられている。
さらに、ニューヨーク・ポスト紙に寄せられた(情報にある)書類のなかには、2017年9月に作成された「弁護士委任契約書」もあった。そこでは、葉(会長)の腹心の部下とされた元香港政府高官の何志平(Chi Ping Patrick Ho)が、ハンターに100万ドル(約1億円)を支払うとの契約が記されていた。「米国の法律や、米国法律事務所と弁護士に関する雇用や法務問題についての顧問業務に関連する案件での相談料」とのことだった。
しかし何氏は、2018年12月には、2つの事件をめぐってマンハッタン連邦裁判所で有罪判決を受けている。チャドでの石油利権や、ウガンダでのビジネス利権のために、アフリカの政府高官に300万ドル(約3億円)を贈賄した容疑だった。何氏は、3年間服役した後、今年6月に香港に国外退去とされた。
ハンターの弁護士、ジョー・バイデン陣営、ギリアー氏、董氏、何氏の弁護士のいずれも、ニューヨーク・ポスト紙からのコメントの求めには応じていない。しかし、ハンターの弁護士は、「ルーディ・ジュリアーニ氏が提供したとされる情報に関しては、何もコメントする必要はない」と語っている。
「彼は、ロシアの諜報機関とつながる人たちに公然と依拠して、バイデン家に関して、まるで信用ならない陰謀論を広めようとしている。この問題をめぐる彼の発言が真実でないことは、おのずと明らかだ」とも、ジョージ・メシレス弁護士は語った。
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このスクープ記事で取り上げられた、ハンター氏の海外ビジネスの実態については、現在、YouTube番組「ザ・ファクト」で公開中のドキュメンタリー映画『ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密(Riding the Dragon: The Bidens's Chinese Secrets)』(日本語字幕版)でも映像化されている。
ドキュメンタリー映画「ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密 (原題: RIDING THE DRAGON: The Bidens' Chinese Secrets)」【日本語字幕版】
(藤井幹久 幸福の科学国際政治局長)
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2020年10月24日付本欄 米大統領選、バイデン大敗北は必至か?(3) トランプ大統領、討論会でバイデン候補を"腐敗した政治家"と非難
https://the-liberty.com/article/17702/
2020年10月10日付本欄 バイデン候補の中国マネー疑惑を描いた映画「ドラゴンに乗って」(日本語版)が公開