写真:Yalcin Sonat / Shutterstock.com


10月22日に第2回の大統領候補者討論会が開催され、全米の注目が集まった。11月3日投開票日まで残り2週間を切るタイミングで、最後の山場となるイベントを終えたことになる。

FOXニュースは、討論会直後のリサーチとして、「討論会で勝ったのは、どちらの候補者だったと思いますか?」との質問に対して、「トランプ74%、バイデン24%」との回答結果を紹介した(NEWSNATIONNOW.comより)。

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10月22日FOXニュースより(右)6ABCのWebサイトより


また、勝敗を決する激戦州とされ、トランプ米大統領が、重点選挙区として大規模な演説集会を繰り返しているペンシルベニア州のほか、バイデン候補の地元デラウェア州、ニュージャージー州の3州が対象となる、ABCニュース系列の6ABCのリサーチでも、「トランプ52%、バイデン48%」との調査結果が出た。

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この3州は、いずれも伝統的なブルー・ステート(民主党が優勢な州)だ。したがって、今回のトランプ優勢との判定は、2016年大統領選で、トランプがブルー・ステートをひっくり返して、中西部諸州の"青い壁(ブルー・ウォール)"を崩し(『トランポノミクス』第2章「アメリカ政治史上で最大級の逆転劇となった戦いの傷跡」参照)、逆転勝利を決めた4年前の出来事を連想させるのに十分なデータとなる。

 

ちなみにABCニュースは15日に、同日に予定されていた大統領候補者討論会が中止となった代わりに、フィラデルフィアで開催されたバイデン候補のタウンホールを放映したホスト局となった。しかし、このイベントでは、その前日からスクープ報道されていたニューヨーク・ポスト紙の記事内容に関する質問がまったく出なかったことで、波紋を呼ぶことになった。リベラル・メディアが、あからさまに民主党寄りであることを露呈したとみなされたからだ。


暴露メールをめぐる応酬

討論会は、司会者となるNBCニュースのクリステン・ウェルカー(Cristen Welker)氏が提示する議題に沿って展開されたが、最も注目されたのは、トランプ氏が、再三にわたり、バイデン家の汚職疑惑を問題提起した場面だった。

討論会の中盤でトランプ氏は、10月14日、15日付のニューヨーク・ポスト紙のスクープ記事が暴露したEメールの問題について、次のように言及した。

現在、さらに悪いことが判明している。いろいろなEメールのことだ。ひどいEメールのことだ。あなたと、あなたの家族が金儲けをしていたという話だ。そうしたことが起きていたときに、ジョー、あなたは副大統領だった。あってはならないことだったはずだ。あなたは、アメリカ国民に説明する責任があると思う

これに対してバイデン氏は、「私は、これまでの人生で、外国の政府からは1ペニーたりとも受け取ったことはない」との発言で応じると、トランプ氏は、さらに追及を加速させた。暴露されたハンター氏宛のEメールの中で、中国ビジネスでの利益分配が、バイデン氏本人に対しても行われたことが示唆された内容にふれたのだ。

私は、中国から金をもらっていない。だが、あなたはもらっていた。私は、ウクライナから金をもらっていない。だが、あなたはもらっていた。私は、ロシアからも金をもらっていない。だが、あなたは350万ドルも受け取っていたではないか、ジョー。

あなたの息子のことだが、(Eメールでは)『"えらい方(big guy)"には、10%を渡さなければ』という話が出ているじゃないか。"えらい方"というのは、あなたのことだと思う。私はよく知らないが、あなたが"えらい方"なのだろう。あなたの息子のことだが、『"えらい方"に10%を』という話が出ているじゃないか。私があなたに言いたいのは、そういうことだ。これは、ひどい話だ

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ニューヨーク・ポスト紙のWebサイトより。


疑惑を全否定するバイデン

トランプ氏がここまで話を進めたところで、司会者は発言を遮り、これまでニューヨーク・タイムズ紙がトランプ叩きの論点としてきた、税務申告書の公開の問題に話題を転じた。しかし数分後には、話題は再び、先のテーマに戻ることになった。トランプ氏はさらに追及を強めて、以下の発言をした。

彼の息子は、長いこと仕事に就いていなかった。残念だが、軍隊でも務まらなかった。仕事がなかったのに、彼が副大統領になったとたんに、あまり評判のよくない(ウクライナの)ブリスマ社という会社から、月額8万3000ドルも、もらっていたそうだ。エネルギーのことなど、何も分からないというのに

これに対してバイデン氏は、「何の証拠もない話だ。このことを調査した人で、息子が、ウクライナで不法行為をしたと言っている人は、誰もいない」と、疑惑を全否定する発言で応じた。

バイデン氏の息子ハンター・バイデンの疑惑については、ドキュメンタリー映画「ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密」(日本語字幕版)で迫っている。この映画の中では、2019年10月にABCニュースの番組で、ハンター氏がインタビューに答えた、以下の場面が紹介されている。

インタビュアー:「あなたがバイデン家の人間でなければ、ブリスマ社の役員になれましたか?

ハンター:「分かりません、分かりません、そうはならなかったでしょう

ナレーション:「パートナーのデボン・アーチャーと共に、ハンターはブリスマ社の役員になったが、ハンターのウクライナでのビジネスは、後にバイデンに利益相反の疑いを生じさせた


ハンター関係者の内部告発サプライズ

さらに、討論会当日のサプライズとなったのは、討論会に先立ち、ハンター氏のビジネス・パートナーだったトニー・ボブリンスキ(Tony Bobulinski)氏による内部告発の記者会見が行われたことだ。同氏の発言は、以下の通りだ。

バイデンは、これまでハンターとはビジネスの話をしたことはないと言ってきました。しかし、それは事実ではないです。私がそれを知っているのは、ジョー・バイデンも含めたバイデン家のビジネスに関わってきたからです

そして、ボブリンスキ氏は、暴露されたEメールにある「えらい方」が指しているのは、バイデン氏であることを認めたうえで、人民解放軍との関係が深いとされる中国企業によるバイデン家とのビジネスの目的が、「政治的な、影響力を行使するための投資」であったことを証言した。これにより、バイデン家の汚職が、国家安全保障の懸念を招くものであったことが、いっそう裏付けられる形となった。


中国に買収された"腐敗した政治家"

10月22日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙でも、論説委員のキンバリー・ストラセル(Kimberly Strassel)氏が「バイデン家のレガシー」と題する論説記事の中で、以下のように結論づけている。

CEFC(チャイナ・エナジー)社は、中国政府や中国軍と密接な関係を築いていたが、米国当局からマネー・ロンダリングの容疑で起訴される事件があった後に、倒産している。CEFC社が、その影響力を利用するために、ハンターを買収していたのは明らかだ

こうして"疑惑"の証明が進んだことを背景に、討論会の終盤では、トランプ氏は、バイデン氏に対してストレートな非難を浴びせた。"腐敗した政治家(corrupt politician)だ"との言葉を繰り返す、以下の発言をしたのだ。

ロシア、ウクライナ、中国ほかの国々や、イラクでのことが、もし真実ならば、彼は、腐敗した政治家だ。自分がまるで幼児のように潔白だなどという話を、私にしないでくれ。あなたは腐敗した政治家だと、言われているだろう

これから最終盤となる選挙戦において、今後、注目されるポイントの一つは、すでにFBIが押収したハンター・バイデン氏のものとされるパソコンのハードディスクから発見された、大量のデータのなかから、さらにどのような情報が飛び出すかだ。

バイデン氏の"腐敗"が決定づけられる致命的なダメージが生まれれば、現在、「バイデン優勢」とされる世論調査のデータも、2016年のヒラリー当確見通しと同様に、完全に覆される可能性がある。

(藤井幹久 幸福の科学国際政治局長)

【関連動画】

ドキュメンタリー映画「ドラゴンに乗って:バイデン家と中国の秘密 (原題: RIDING THE DRAGON: The Bidens' Chinese Secrets)」【日本語字幕版】

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2020年10月16日付本欄 米大統領選、バイデン大敗北は必至か? 息子ハンターをめぐる疑惑の証拠メールが暴露

https://the-liberty.com/article/17679/

米大統領選、バイデン大敗北は必至か?(2) バイデン家と中国共産党の"深い闇"を立証する証拠メールが暴露

https://thefact.jp/2020/2744/

2020年10月10日付本欄 バイデン候補の中国マネー疑惑を描いた映画「ドラゴンに乗って」(日本語版)が公開

https://the-liberty.com/article/17661/