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《本記事のポイント》
- バイデン親子のスキャンダルで嫌中意識の高いアメリカ国民はトランプ氏を選ぶ
- 「最低賃金」や「クリーン・エネルギー政策」で経済は浮上しない
- リベラルメディアも一部の州でトランプ氏に軍配を上げた
トランプ大統領とバイデン元副大統領の2度目にして最後のディベートが22日夜(現地時間)、テネシー州ナッシュビルで行われた。
バイデン親子のスキャンダル
注目されたバイデン親子のスキャンダルについて、トランプ氏は、バイデン親子が中国から資金提供を受けていたと指摘したが、バイデン氏は非倫理的なことは何もしていないと主張した。
なおトランプ氏は、ハンター・バイデン氏の元ビジネスパートナーで退役軍人のトニー・ボブリンスキー氏をディベート会場に同行。同氏はメディアに書簡を送り、ジョー・バイデン氏が息子を使って中国から巨額の利益を得られるよう、働きかけていたことを暴露した。また、この問題に関係している人物から「暴露すればバイデン元副大統領も含めて、仲間を陥れることになる」と脅されたにもかかわらず、記者会見まで開いた。
このスキャンダルについては、今後トランプ氏のロシア疑惑の捜査のように、特別検察官が任命される可能性も出てきている。
経済を殺す民主党のコロナ対策
冒頭の30分近くの時間が充てられたのがコロナ対策である。バイデン氏は、安全を維持しつつ経済を稼働できるとして、アクリル樹脂等で人と人の接触を避けながら経済を稼働させるべきだと主張。そして「これだけの死者を出した人物は大統領に留まるべきではない」と断じた。
これに対してトランプ氏は、「処方箋が問題よりひどいものであってはならないはずだ(the cure cannot be worse than the problem itself)」と述べ、このままシャット・ダウンを続ければ、自殺者やアルコール患者も増えて弊害が大きいとしつつ、ニューヨーク州など民主党系の知事の州はゴーストタウンになっていると主張。またアクリル樹脂も高くつくと、経営者の立場を慮った。さらにコロナ対策は、年齢によっても州によっても状況が異なるため、対応も変えるべきだと主張し、経済再開の重要性を訴えた。
メディアはゴーストタウン化したニューヨークの惨状を取り上げていない。だがその惨状を知れば、民主党の政策に欠陥があることは明白だ。
GDPの約7割を占めるサービス産業は、人と人が接触したり移動したりした時に行われるもの。そこに規制をかけた結果、経済が殺されてしまったのだ。
カリフォルニア州、ニューヨーク州、イリノイ州、ミシガン州だけで、アメリカのGDPの3分の1を占めている。人間はコロナで倒される存在ではないという自覚のもと、経済活動の再開を急がなければ、処方箋によって、経済が殺されてしまう。
バイデン氏は、コロナが再度流行れば、将来的にロックダウンを行う可能性がある。一方トランプ氏は、年齢や州の状況により、対応を変えるべきだとしているので、経済全体がシャット・ダウンされることがないことは確かだ。
しかもバイデン氏は、トランプ氏ほどコロナが中国由来であることを強調しなかった。トランプ氏はこれまでも「中国に責任を取らせるつもりだ」と主張しているが、バイデン氏は中国にコロナの責任を取らせるとは発言してこなかったことにも注目すべきだ。
中国・北朝鮮:"All Talk and No Action"
中国について、バイデン氏は「国際的なルールに従わせる」「知財を奪わせない」と述べ、北朝鮮に関しては「朝鮮半島は非核地帯でなければならない」と踏み込んだ。
だが肝心の、どうすればそれを実現できるのかという実行可能性については全く見えてこなかった。
むしろオバマ政権時代に、対中政策で弱腰の姿勢をとったことで、中国が強気に出て南シナ海に人工島を建造したことなどが思い出される。バイデン政権誕生の折には、オバマ政権時代の外交ブレーンらの政権入りが見込まれているため、今度も中国に足元を見られる可能性がある。
そもそも、北朝鮮を増長させたのはオバマ政権だ。多国間の枠組みを重視し「戦略的忍耐」を掲げた結果、北朝鮮の核による危機が周辺国を脅かした。その結果、トランプ氏は1期目の初めに北朝鮮の核問題に真正面から取り組んだのだ。バイデン氏は、「言葉だけで、何もしてこなかった」というのが実態である。
経済音痴をさらけ出したバイデン氏
司会者が経済について触れないようにしたため、トランプ氏の1期目における経済面の成果は大きくアピールされなかった。それでもディベートの中で、バイデン氏は経済に疎い、という印象を残す結果となった。
特に際立ったのが最低賃金についてのバイデン氏の見解だ。バイデン氏は、「不況に苦しむ今、連邦レベルでの最低賃金を導入することが正しいのか」と司会者に尋ねられると「もちろんです」と答えた。次の議題に移ろうとする司会者を止めて、トランプ氏は、最低賃金は州の選択にすべきであり、むしろ最低賃金を導入することで雇用が減少すると訴えた。バイデン氏は「それは本当ではない」と主張したが、実際のところはどうか。
連邦議会予算事務局によると、最低賃金を導入すると、130万人の雇用が減少するという。しかも同局は、世帯当たりの収入は2025年までに87億ドルも減少するという試算も出している。雇用の減少、商品価格の上昇、生産性の減少などがその理由で、結局は賃金の上昇を相殺するというのだ。
またバイデン氏はクリーン・エネルギー政策で雇用を生み出すとしているが、環境規制の強化は、高い電気代や高い自動車代に支払うコストが上がり、所得の15.3%も"見えない税金"として支払うことになるという試算もある。
「最低賃金」「クリーン・エネルギー政策」においても、バイデン氏は経済音痴を露呈したと言えよう。
リベラルメディアも、一部の州でトランプ氏に軍配を上げた
では誰がディベートに勝ったのか。リベラルで知られるABCニュースでも、カリフォルニア州の世論調査の結果として、僅差ではあるがトランプ氏がバイデン氏に勝利したと発表した。リベラルなカリフォルニア州での「僅差」の勝利は、トランプ氏がリベラル派をも納得させる説得力のあるディベートを展開できたということを意味するのかもしれない。
ABCニュースのホーム・ページより
同じくリベラル系メディアのCNNは、バイデン氏53%、トランプ氏39%と、10%以上引き離して勝利したと報じた。
一方、保守系メディアのフォックスでは、トランプ氏が勝ったと答えた人は74%と、バイデン氏の24%と大差をつけている。
FOX NEWSのYouTubeより
アメリカでディベートを見ていた人の中には、今回はトランプ氏に投票することにしたという民主党支持者もいる。理由はバイデン氏では中国の台頭を抑えられないことが明白になったからだという。
バイデン親子のスキャンダルはバイデン氏に不利に働くのは間違いない。中国に怒りや脅威を感じている多くのアメリカ人は、トランプ氏のことが嫌いでも、中国と癒着したバイデン氏よりはましだと考える傾向があるからだ。バイデン氏は、人柄の良さとコロナ対策でトランプ氏に勝てると考えていたようだが、そうは問屋が卸さないだろう。
(長華子)
【関連書籍】
『米大統領選 バイデン候補とトランプ候補の守護霊インタビュー』
幸福の科学出版 大川隆法著
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