福島第一原発事故の国際評価尺度が、これまでのレベル5から「レベル7」に引き上げられた。

経済産業省の原子力安全・保安院と原子力安全委員会の見解を踏まえて発表されたもので、1986年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と並ぶ最悪レベルの評価となった。

この発表を受けて、各紙社説は次のように論評した。

「2段階の引き上げは当然であり、むしろ見直しに3週間以上かかったことに首をかしげざるを得ない」(日経)

「なぜ今ごろになって評価を引き上げたのか、疑問は残る」(毎日)

「事故発生から一ヵ月たってからのレベル7の評価はあまりに遅い」(東京)

このように3紙が判断の変更と遅さを批判した。

また、朝日は「これでわかった事故の巨大さを、深く心に刻まなくてはならない」と真正面から深刻さを訴える。

全く異なる論調を展開したのは産経だ。

「チェルノブイリとは全く違う」として、「『最悪』評価はおかしい」と主張。その根拠として、次の論点を掲げる。

・ 放出された放射性物質の量は、チェルノブイリの10分の1に過ぎない。

・ (2号機爆発後に最大で毎時1万テラベクレルの能力を持つ放射性物質が外部に放出したことを根拠にレベル7に引き上げたが)今はその1万分の1に減っている。

・ 福島では被曝による死者が皆無であるのに対し、チェルノブイリは約30人の発電所員らが死亡している。

全般的に、不安を煽る方向の報道が多く、気のせいか「チェルノブイリ並みの深刻な事故として報じたい」というメディアの意図も感じる。その意味で産経の指摘は重要だ。国際原子力機関(IAEA)も、12日に福島の事故の深刻さはチェルノブイリに遠く及ばない、との見解を発表している。事実関係を正確に見極め、冷静に対応策を考えることが重要だろう。(村)

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