G20の財務相・中央銀行総裁会議が14日からワシントンで開かれ、貿易赤字など世界経済の不均衡や、人民元改革を含めた国際通貨の枠組みが議論の的になる見通しだ。

論文掲載サイト「プロジェクト・シンディケート」では11日付で、カリフォルニア大学バークレー校教授のベアリー・エイチェングリーン氏が国際通貨の新たな枠組みについて論じている。

IMFの特別引き出し権(SDR)がドルに代わる国際通貨の選択肢として議論されているが、エイチェングリーン氏によれば、国際取引に使われていないSDRを基軸通貨化するには、市場の整備や、IMFに「世界の中央銀行」としての通貨発行の権限を与える必要があり、現実的でない。その上で同氏は、ドル、ユーロ、人民元の三つの通貨をバランスさせ、金融市場の過熱を防ぐ案を提案している。

一方でSDRをめぐっては、1日付の同じサイトで、ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏らが役割の拡大を提案している。危機に備えて各国が外貨準備にお金を回せば、その分だけ世界全体の需要が収縮するが、SDRの流通がこのリスクを抑えるほか、経済不均衡の是正にもつながるという主張である。

金融危機後のFRBによるドルの大量供給で急激なドル安が進行しており、氾濫したドルが新興国に流入してインフレを招いているとの批判も出ている。米経済の相対的な世界でのシェアの低下とアメリカの財政難は、国際通貨としてのドルのあり方に影響を及ぼしている。SDRはひとつの案だが、国家主権の問題が今後、当然議論になるだろう。

エイチェングリーン氏の論説でひとつ気になるのは、日本円を全く無視していることである。同氏は通貨問題の専門家だが、もしこれが公の場で日本円を無視した議論ができる状況になったという一つの兆候なのであれば、「ジャパン・ミッシング」に日本はもっと危機感を持たねばならないだろう。

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