《本記事のポイント》

  • 嘱託殺人事件の容疑者の医師は自殺未遂を繰り返していた
  • 4年前の障害者施設殺傷事件に通じる発想
  • 宗教が「テロ思想」「全体主義思想」からの防波堤

ALSの患者である51歳の女性患者の依頼で薬物を投与し、殺害したとして、医師2名が嘱託殺人の容疑で逮捕された事件が波紋を呼んでいる。

京都府警は、女性の症状が安定していて、死期が迫っていなかったこと、医師が主治医ではなく、女性が医師の口座に金銭を振り込んでいたことから、正当な医療行為ではないと判断し、逮捕に踏み切っている。

女性は一人暮らしをしており、身体の自由が利かなくなったことで24時間介護を受けていた。以前から、「安楽死したい」と周囲に漏らしていたという。女性は薬物投与により死亡したが、これは「積極的安楽死」とされ、日本では認められていない。

逮捕された大久保愉一医師の妻は26日に会見を開き、大久保氏が以前から「『死にたい』と口にして自宅で自殺未遂を繰り返していた」とし、「死にたい人の気持ちに共感しすぎたのではないか」と明かしている。

殺すことが「救い」という発想

この事件で物議をかもしているのが、嘱託殺人を行った医師2名が、共著で『扱いに困った高齢者を「枯らす」技術:誰も教えなかった、病院での枯らし方』という電子書籍を発行していたとみられることだ。この本では、医療に紛れて殺人を犯せることを記述していた。

また、大久保氏は「高齢者を『枯らす』技術」というタイトルのブログを運営しており、「日々生きていることが苦痛だという方には、一服盛るなりしてあげて、楽になってもらったほうがいいと思う」などと言及していた。

一連の発言からは、「認知症や寝たきりで生きるのは不幸」「高齢者が長生きして周りが不幸になるなら、早く殺すことが救いになる」といった発想が見え隠れする。

こうした発想は、7月26日に4年が経つ、相模原障害者施設の殺傷事件にも通じる。

19人の障害者を殺害し、26人に重軽傷を負わせた植松聖死刑囚は、事件前に、衆院議長公邸に障害者を安楽死させる法律を作るよう求める手紙を出している。その中で「障害者は人間としてではなく、動物として生活を過しております」「障害者は不幸を作ることしかできません」と書いていた。

『愛と障害者と悪魔の働きについて─「相模原障害者施設」殺傷事件─』

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大川隆法著

幸福の科学出版

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大川隆法・幸福の科学総裁が事件後、植松氏の背後にある霊存在をリーディングした。その内容は、『愛と障害者と悪魔の働きについて ─「相模原障害者施設」殺傷事件─』として発刊されている。

小悪魔とみられる存在は「彼ら(障害者)を苦しみから解放した」と発言。同時に、「救いの第一幕は障害者を、第二幕として、『高齢化社会の解決には、高齢者を殺せばいい』」と明かし、今後も類似の事件が起こることを示唆していた。

さらに、その小悪魔を思想的に指導した存在を呼び出すと、哲学者ニーチェの霊が現れた。ニーチェは、正義の基準を示す宗教や道徳を否定し、弱者の撲滅につながる思想を説き、ヒトラーに影響を与えたとされている。

ナチス・ドイツでは1939年、社会と国家に、遺伝子的、そして経済的に負担となる個人を排除するとして、障害者の安楽死を進めた。ユダヤ人の大虐殺を始める2年前のことだった。

ニーチェ霊は、障害者や高齢者を殺害することを正当化しつつ、その狙いは、テロ思想を起こすことであると明かした。大川総裁はリーディング後、「ネオナチみたいなものが出てこられる道筋が、今、立とうとしているわけです」と警告していた。

「障害者や高齢者を、殺すことが救済になる」という発想が、形を変えて現れる。「自分や自分が属する社会集団の考えを絶対視する思想」であり、その先は、暴力的な政治運動や全体主義につながる。

これを否定する論理を持たなければ危険だが、「人の死」を扱う宗教に、その答えはある。

この世で生きる意味の捉え方

尊厳死や安楽死自体は、その人の人生観や魂観によって善にも悪にもなる。

この世で生きることがすべてだと思って延命治療を続けるだけでは、「あの世への旅立ち」を妨げ、魂の苦しみをあの世に持ち越す場合もある。死期が迫り、患者本人や家族が過剰な延命治療を希望していない時にはその意思を尊重し、苦痛を軽減することを優先させた方が、患者のあの世での幸福につながる場合がある。

逆に、死がすべての終わりだと思って、唯物的に安楽死を行った場合、死後に大変な混乱が起こる場合がある。幸福の科学では、人生の苦しみから逃げるために自殺すると、死後、天国にも地獄にも行けず、本来の寿命までこの世に留まり、生きている時の苦しみの10倍以上になると説かれている。

自殺した人の霊が、他の人を自殺に引きずり込むこともある。今回は、医師自身が自殺未遂を繰り返していたことから、自殺霊の影響を受けていた可能性もある。

人間は、この世に生まれて様々な経験をすることで魂を磨く。生まれてくる前に、今世の人生に必要な経験を本人が立てていて、その中に、病気で苦しむ経験がある場合がある。学ぶべきものを学ばずにあの世に行くと、課題が来世に持ち越しになってしまう。

いずれにせよ、「人間は永遠の生命を持っている」という視点が無ければ、解決できない問題だ。

社会が宗教を排除する中で、代わりに「排除」の思想や、「粛清」の思想が入ってきていることも伺える。宗教が本来の使命を取り戻し、人々の魂を救うことが、「テロ思想」「全体主義思想」からの防波堤にもなってゆくだろう。

(河本晴恵)

【関連書籍】

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