2020年1月号記事

部下は 3日 で上司を見抜く

人望力の鍛え方

優しいだけで上司は務まらない。厳しいだけでは人がついてこない。

人望ある上司の条件とは何か。

(編集部 片岡眞有子、山本泉)


contents


CASE 1 感謝

人がいてこそ仕事が大きくなる

会社っていうのは、社長一人では動きません

どうしても、部下のできないところにばかり目がいきがちなもの。

「働いてくれている」ことに日々感謝しているだろうか──。

「ありがとう」の循環とともに成長する。そんな企業が、横浜にある。

さくら住宅

代表取締役社長

二宮 生憲

(にのみや・たかのり)1947年、愛媛県生まれ。法政大学卒業後、大手住宅メーカーに入社。その後独立し、同僚4人で注文住宅会社を設立。大手住宅メーカーの取締役を経て、さくら住宅を創業。

神奈川県横浜市のリフォーム会社、さくら住宅。地域から愛され、1997年から21年連続で黒字を出す優良企業だ。

本社のある同市栄区桂台地区では、約4000世帯のうち5軒に1軒が同社の顧客。社員45人と小規模でありながら、「カンブリア宮殿」などのテレビ番組でも取り上げられた。

なぜこれほど地域に愛されるのか。秘密は、同社を創業した二宮生憲社長の経営哲学にある。

支えられて生きてきた

「会社っていうのは、社長一人では動きません。実際にお客様と第一線で接しているのは、営業や現場監督を務める社員、外の職人さんたちですから。そうした人に巡り会えたからこそ、会社が成り立っています」

そう語る二宮社長にとって、利益は社員が生み出したもの。毎月の月次決算を社員に公開し、30分ほどかけて「あなたたちの頑張りがこれだけの売り上げにつながった」と丁寧に伝える。さらに、「一円でも多く社員に還元したい」という思いから、年に4回ボーナスを出している。

こうした哲学の背景には、人間は一人で生きているのではない、という思いがある。二宮社長は、半生をこう振り返る。

「中3の時に父が肺結核で入院し、高校進学はできないだろうと思いました。そんな時、ある先生がわざわざ家まで自転車で来て、『事情を知らずに悪かった。お金は先生が出すから、お前は高校に行け』って言ってくれたんです。勝手に願書まで出していましてね(笑)。結局、何とかお金を工面して進学しましたが、あの時の感動は忘れません。これまで、本当にたくさんの方に助けてもらってきました」

高校卒業後は、働きながら夜間の大学に通った。苦労は多かったはずだが、二宮社長の口から誰かを恨む言葉はかけらも出てこない。

もう十分に与えられている。あとは、それを人々にお返ししていきたい。そうした二宮社長の生き方が、多くの人を惹きつけているのだろう。

次ページからのポイント(有料記事)

「ありがとう」の循環

リーダーの柔軟さが発展を導く - 履正社学園豊中中学校・履正社高等学校校長 小森重喜氏

多様性が生み出す強さ - シンクグローブ・コンサルティング代表 糸木公廣氏