《本記事のポイント》
- 「子供を3人くらい産むようお願いしてもらいたい」と桜田前五輪相が「失言」
- 日本の人口を維持するには、出生率2.07以上が必要なので、間違いではない
- 教育無償化や働き方改革よりも、規制緩和と消費減税で出産・子育てしやすい日本に
桜田義孝前五輪相の発言が問題になっている。
桜田氏は先月、千葉市内で開かれたパーティーの挨拶で、少子化問題に関連して「子供を3人くらい産むようお願いしてもらいたい」などと述べた。これに対する批判が巻き起こり、同氏は「子供を安心して産み・育てやすい環境をつくることが重要だとの思いで発言した。それを押し付けたり、誰かを傷つけたりする意図はなかった」と釈明した。
出産や子育てに関する話題は、ひと昔前は当たり前に聞かれたが、男女の生き方が多様化している現代では、「価値観の押し付け」「配慮がない発言」とされることも多い。
桜田氏の発言は時代にそぐわず、褒められるものではないかもしれない。しかし、日本の実情を示しているのも事実だ。
政府の「少子化対策」は逆効果!?
少子化が進む日本では、出生率が2.07にならなければ人口は維持できない。そのため、発言の趣旨自体は間違っていない。
ただ、政治家という立場を考えると、「子供を安心して産み・育てやすい環境」を叶える具体的な政策を示すべきだった。しかし、桜田氏が所属する与党の政策は、それを叶えるものではない。
10月から始まる幼児教育の無償化は、「無料なら預けたい」というニーズを掘り起こし、待機児童問題を悪化させる可能性が高い。多額の税金もつぎ込まれ、さらなる増税が必要になるのは想像に難くない。
「働き方改革」による長時間労働の是正や男性の育休習得の促進なども、「少子化対策の大綱」に盛り込まれている。だが、政府が残業を規制しても、仕事量は変わらないところもあり、余裕を持って子育てができるようになるかは疑問だ。
残業規制や有休取得の義務化など、労働環境に対する規制が経営悪化を招けば、中小企業を中心に、「子供を安心して産み・育てやすい環境」をつくることは難しくなるだろう。さらに消費増税によって家計が冷え込み、ますます出産をためらう人が増えてしまう。
規制緩和と減税で出産・子育てしやすい環境を
働き方改革のように、政府が企業活動を締めつけるのではなく、規制緩和と減税を行うことこそが「最大の育児支援」となる。
例えば、規制緩和が進んでいるとはいえ、幼児教育・保育の分野では未だに規制が多く、民間企業の参入障壁が高い分野だ。規制緩和によって、子供を預けられる場所を増やし、待機児童の解消を図りたい。
また、バウチャー(クーポン、または引換券)制度を導入し、補助金が保育所ではなく、直接保護者に届く形にする。そうなれば、今よりも希望する保育所などに預けられる確率が高くなり、競争の原理が働くことで、「保育の質」も向上する。バウチャーを一時保育などにも使えるようにすれば、普段は自宅で子育てをし、必要なときに預けるというニーズにも応えられるだろう。
そして10月に予定されている消費税10%への増税は即刻中止すべきだ。増税のたびに、個人消費は落ち込み、経済は悪化の一途をたどっている。その財源は「子育て世代や子供の教育に投入される」とされているが、景気が悪化し、家計に大打撃を与える増税を行っていては、元も子もない。消費減税で、景気をよくし、所得を増やす方が、子育て支援につながる。
与党は、今回の「失言」に振り回され、火消しに追われるのではなく、少子化対策の費用対効果を検証し、本当に「子供を安心して産み・育てやすい環境」を実現する政策を示してほしい。
(駒井春香)
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