《本記事のポイント》
- 香港で、「逃亡犯条例」の改正案が立法会で審議されている。
- 改正案が成立すると、反中の人々が香港から中国に連行される恐れがある。
- 香港の自由を守るため、日本は香港を支援しつつ、中国に強く抗議すべき。
香港の自由が著しく失われている。
香港政府は4月上旬、「逃亡犯条例」の改正案を立法会(議会)に提出した。これは、香港で拘束した容疑者の身柄を中国本土、マカオ、台湾にも引き渡すことができるようにするもの。審議は始まっており、7月にも成立する可能性がある。
改正案が提出されたきっかけは、台湾で発生した殺人事件である。香港在住の男性が休暇で訪れた台湾で、交際相手の女性を絞殺して香港に逃亡。しかし、香港と台湾の間には身柄引き渡し協定がなく、容疑者の身柄を台湾に移送できないことが問題になっていた。
ただ今回の改正案には、台湾だけでなく中国本土も対象に含まれていた。そのため香港では、「親中派が多数を占める香港当局は、台湾での事件を利用して、中国共産党に批判的な活動家を中国に引き渡そうとしている」と強い反発が起きている。
反中派はみな中国に連行?
この改正案が成立すると、中国の習近平体制を批判する香港の人々が、不当な理由で中国本土に連行される恐れがある。同時に中国本土の警察権が香港に及ぶことになり、一国二制度のもとで守られてきた香港司法の独立も、揺らぎかねない。
例えば本誌2016年8月号でインタビューした雨傘革命発起人の戴耀廷(たいようてい)氏は4月上旬、公的不法妨害の罪で有罪となった。雨傘革命を主導した香港大学教授の陳健民氏や牧師の朱耀明氏、香港立法会議員の陳淑荘氏などの活動家ら8人も、同様の罪で有罪となった。
こうした香港の活動家が中国に連行される恐れもある。
また中国共産党に批判的な台湾人や日本人、アメリカ人などが、香港を訪れている間に拘束され、中国に連行される可能性も否定できない。
「一国二制度」の現実
現在、香港には、「一国二制度」が適用されている。これは香港が1997年にイギリスから中国に返還されてから50年間、中国は香港独自の自治や行政、法律、経済制度などを維持することを認めるというものだ。
しかし、香港の一国二制度は守られていない。中華人民解放軍の部隊や中国公安部は香港に駐在し、中国当局は行政長官をはじめとした香港政府の人事に介入するなど、香港の自由は事実上奪われている。
さらに中国は、台湾にも一国二制度を導入しようとしている。習氏は1月2日、今後の台湾政策に関して「"平和的統一" "一国二制度"は統一を実現する最良の形だ」と演説した。これに対し、台湾の蔡英文総統は「(台湾は)『一国二制度』を絶対に受け入れない」と表明している。
もし、台湾に一国二制度が導入された場合、香港と同様、台湾の自由が脅かされる可能性は極めて高いだろう。
香港の自由・民主・信仰を守れ
大川隆法・幸福の科学総裁は、2011年5月の香港での講演「The Fact and The Truth」で次のように指摘した。
「 自由とは、誰もが、平等に与えられている、繁栄への自由です。もし、自由と、平等のどちらかを選ばなければならないなら、あなたがたはまず、自由を選ばなければなりません 」
香港は、「自由・民主・信仰」の大切さを知っている。そして、中国にその価値観を伝えていく使命がある。
日本は、アメリカや台湾などとともに香港を支援しつつ、中国に対し、香港への圧力強化をやめるよう、強く迫るべきだ。
(黒田大智)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『愛は憎しみを超えて』 大川隆法著
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