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《本記事のポイント》
- 270人の全能神信者が日本に亡命申請したが、1人も受理されなかった
- 少なくとも、日本政府は中国の宗教弾圧に意見を発信すべき
- 日本も、中国に自由の精神を"逆輸入"する力となれる
中国で激しさを増す宗教弾圧に世界中から非難の声が上がる中、日本政府は我関せずの姿勢を貫いている。
フランスのNGO「CAP-LC(自由と良心のための個人連携団体)」が3月、スイスのジュネーブで行った第40回国連人権理事会で声明を発表した。
それによると、中国から逃亡し、日本で難民申請を行った全能神教会の信者は270人に上るが、現時点では1人も申請が受理されていない状況だという。中国における宗教の自由の迫害や人権侵害を報じるウェブサイト「Bitter Winter」がこのほど、その内容を報じた。
全能神とは、中国のキリスト教系の宗教団体で、中国政府から不当に逮捕・拘束され、肉体的および精神的拷問を受けるなどの迫害を受けている。生きた信者から臓器が摘出されているという事例も報告されており、事態は深刻だ。全能神教会によると、これまでに30万人以上の信者が逮捕されたという。
日本政府が、中国の人権蹂躙に物申さず、難民申請も有効な手立てを講じていない状況は、大国として恥ずべきことだ。難民申請が通らないということは、本国に強制送還される可能性もある。
中国に自由を"逆輸入"する
日本に欠けているのは、大国としての意志だろう。
難民を受け入れるにあたっては、日本社会になじめるように教育体制を整えたり、日本に貢献する意識をもたせたり、仕事を確保したりするなど、一筋縄ではいかない。難民だからといって無差別に受け入れれば、反日思想を持つ人を呼び込む恐れもある。日本政府が全能神信者を1人も受け入れないのは、中国と事を構えたくないという政治的な理由もあるだろう。
しかし、信教の自由を許さない共産主義国家に対し、日本がどう対応していくかという国家戦略を持っていれば、違う判断もできるはずだ。
例えば、本誌でも取材したキリスト教の牧師ボブ・フー氏は、天安門事件をきっかけにアメリカに亡命後、中国で迫害されているキリスト教徒を守るNGOを立ち上げ、人権活動を続けている。その他、数多くの中国人が、アメリカをはじめとする世界各国で人権活動に従事している。
中国が排除しようとした、自由や民主、神仏への信仰心という精神が、本土から亡命した人々によって中国に"逆輸入"されようとしている。
日本も、中国に自由を送りこむ力をつけるべきであり、そうした信念があってこそ、難民受け入れの具体的な体制や対中戦略も考えることができる。少なくとも、1人も難民申請を受理せずに、中国の宗教弾圧を見て見ぬふりするような現状は変える必要がある。
(片岡眞有子)
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