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《本記事のポイント》

  • アメリカ政府が、ファーウェイCFOの身柄引き渡しの要請に動く
  • 2019年の株式市場は「アップルショック」で揺れたが、中国ではアップル不買運動も
  • 日本も「反日デモ」の被害を受けたことがあり、過度な中国依存は危険

中国通信大手「華為技術(ファーウェイ)」の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)の拘束をめぐり、アメリカ政府はカナダ政府に対し、身柄引き渡しを正式に要請する方向で動いている。カナダのグローブ・アンド・メール紙が22日に報じた。

孟容疑者の拘束後、中国はカナダ人2人を拘束し、麻薬密輸の容疑で有罪となっていたカナダ人に対して死刑判決を下している。「やられたらやり返す」というような傍若無人の振る舞いには、世界から厳しい目を向けられている。

そうしたなか、中国の矛先は米アップル社にも向けた。

「アップルショック」の裏にある不買運動

2019年の世界の株式市場の幕開けは、アップルの業績予測の大幅な悪化による急落から始まった。いわゆる「アップルショック」だ。これに密接に関係していると見られるが、中国で起きる「アップル製品の不買運動」である。

孟容疑者の逮捕を受け、台湾の蘋果日報は12月、「中国の複数の企業が、アップルのスマートフォンであるiPhoneの使用を中止するよう従業員に通知した」と報じている。中国は「米中貿易戦争」をめぐり、不買運動によってアメリカから譲歩を引き出したい考えと見られる。

日系企業も反日デモの餌食に

こうした手法は、中国の常とう手段でもある。

日本政府が2012年に尖閣諸島を国有化して以降、中国各地で反日デモが起き、日系スーパーは略奪の被害を受け、日本食レストランなどは破壊された。中国政府はこの暴動を黙認し、日本に対してプレッシャーを与えたことは記憶に新しい。

今回の相手は、日本以上に強面のアメリカであることから、このような暴動にまで発展していない。中国はそうした「非対称戦」によって相手国を苦しめてきた。

しかし日本は、苦い経験があるにもかかわらず、それを忘れたかのごとく、中国人観光客を増やす施策が全国的に行われている。例えば沖縄では、2018年の中国本土からの観光客が、前年比25.5%増となる63万2400人を記録。外国人観光客のうち、約2割が中国本土となっている。

だが、日中両政府が対立すれば、中国は観光客の訪日ツアーを中止に追い込むなどして、日本をコントロールしようとするのは目に見えている。"観光産業の中国化"は、そうした高いカントリーリスクがはらんでいる。

アップルショックの本質は、「中国市場の依存をいかに減らすか」という課題を提示したことにある。ファーウェイの問題は、そうしたマクロ的な視点から見なければ、事の本質を見誤ってしまうだろう。

(山本慧)

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