《本記事のポイント》
- 自然災害でマイナス成長の日本。ハリケーンが来ても経済成長するアメリカ
- アメリカは戦略的に国力を増強している
- 「チャイナ・ファースト」を実現して、幸福追求権を放棄する日本
内閣府が14日に発表した7月~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、年率換算で1.2%のマイナス成長となった。1月から3月のGDPも、年率換算で1.2%のマイナス成長であり、2四半期ぶりのマイナス成長で、景気が足踏みしている状態が明らかになった。
今回のマイナス成長の主たる要因は、7月の西日本豪雨、9月の北海道地震、相次ぐ台風などの自然災害で、個人消費や輸出が押し下げられたこととされている。
トヨタ自動車は、北海道地震や台風で部品供給が滞った影響で、9月の輸出台数が前年同月比の11.4%減となり、幅広い地域への輸出が滞った。災害で訪日観光客が減少し、消費が減ったこともマイナス要因となった。
輸出(外需)がマイナスとなったことで「景気の先行きに対する不安は強まる」という警戒感が出ている。
ハリケーンが来ても、揺るがないアメリカ経済
自然災害によってマイナス成長に陥ったという日本。どこか違和感を覚えないだろうか。
アメリカは10月、ハリケーンに見舞われたが、25万人の雇用を創出した。トランプ政権の発足後、450万人の雇用を生み出し、3.1%の賃金の伸び率を記録している。この上昇率は2008年のリーマン・ショック以来最大だ。
アメリカの消費者マインドを見る指標である、消費者信頼感指数(Consumer Confidence)も2000年9月以来、18年ぶりの高い指数を記録した。この指数から消費者が景気動向を楽観視していることがうかがえる。
トランプ政権第2四半期のGDP成長率は4.2%、第3四半期も3.5%となるなど、2期連続で高い成長率を達成している。
MAGAnomicsの威力
好景気の最も大きな要因は、2017年12月に成立した大型減税法案(Tax Cut and Jobs Act)である。
トランプ氏は選挙期間中、減税を目玉政策の一つに掲げていた。
トランプ氏の公約の通り「アメリカをもう一度偉大にする(Make America Great Again)」には、国民に繁栄を取り戻さなければならないからだ。そのため、この経済政策は、MAGAnomicsとも呼ばれている。
オバマ時代の経済成長率は平均すると2.1%。二期目の最後の成長率は1.5%でしかなかった。
元大統領経済顧問のローレンス・サマーズ氏は2013年11月、アメリカは労働人口や生産性の伸び悩みで経済成長が抑えられる長期停滞期に突入した可能性があると指摘。それは日本が20年にわたって経験したものと同じだと主張していた。そのため、3%以上の経済成長率はあり得ないという悲観主義やあきらめがアメリカの世相を覆っていた。
だが、トランプ氏が選挙公約とした減税法の成立を実現したとたん、アメリカの経済は活況を呈し始めた。減税措置の一つとして5年にわたり新規設備投資を損益として計上できる即時償却を認めたため、アマゾンは海外に留保していた利益をアメリカに還流させただけでなく、300億ドル(3.4兆円)の設備投資を行うと宣言。現代のマーシャルプランと呼ばれた。
戦略的に国力を増強させるアメリカ
今年2月に出された2019年度の予算教書でも、実質成長率は19年には3.2%に上昇し、24年まで3%を保つとしている。また、歳入は10年後に2.5兆ドル(約270兆円)増えると試算する。
2017年度の歳出は4.1兆ドル(463兆円)で、歳入は3.4兆ドル(384兆円)だった。この歳入が10年後に5.9兆ドル(667兆円)になる計算だ。トランプ政権は軍事費を10年後に3割増強する。それに耐え得る経済基盤をつくる予定だろう。
トランプ政権後も3%の成長率を保つことができれば、2047年までにGDPは47.1兆ドル(5322兆円)になるという計算もある。この経済力があれば、2025年から2050年の間に起きる可能性の高い中国との軍事的衝突を、コスト競争を仕掛けて防ぐことも可能となる。
「チャイナ・ファースト」は日本人の「幸福追求権」の放棄
菅義偉官房長官は、消費増税ができる経済環境が整ったら増税するとしている。だが、内需が冷え込んだ現在の日本経済は輸出に頼ろうとしている。中国の経済が減速したり、自然災害が起きたりするだけで、マイナス成長に陥るぐらいの脆弱な経済情勢にある。
このような経済環境で、消費増税を行えば景気を腰折れさせるだけ。むしろ必要なのは、法人減税を含む大型減税で企業を日本に呼び戻し、内需を拡大する「ジャパン・ファースト」だ。昨今問題になっているグローバリズムは、実のところ「チャイナ・ファースト」であり、日本は進んで中国の国益を実現している状況である。
この状態は、政界や財界が日本人の「幸福追求権」を進んで放棄しているに等しい。一方、アメリカは大型減税、規制緩和等を進めており、国民の幸福が追求できる国に戻りつつある。
独立宣言にある「幸福の追求権」とは、「財産、金銭」面での幸福を全面的に肯定するものだ。端的に言えば、「お金にならないアメリカなど意味がない」という考えがアメリカの国是とも言えるからである。アメリカ人は物質的な繁栄は、神の栄光の証明でもあると考えており、建国の時点で、物質面でも世界が見上げる「丘の上の町」、つまり模範になる使命感を持っていたのである。
トランプ氏は、演説の中で幾度も「世界をアメリカの模範によって導く」と述べてきた。日本は、その模範にならい国力を増強できるのか。本当に国民の幸福追求権を守る政治を実現できるのだろうか。中国との新冷戦を迎えつつある中、長期的な繁栄の基礎を築く意志を持たなければ、国の未来が危うい。
来年の消費税導入に向け、メディアは軽減税率やポイント制の導入など小手先の議論に終始する。だが国民を真の争点から逸らすのはそろそろやめるべきだろう。長期的な展望に立ち、経済を浮上させることが喫緊の課題である。
(長華子)
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